VUCAの時代における個人の生存戦略とは
マッキンゼー・アンド・カンパニーから、NTTドコモ、リクルート、オプト、Google、楽天などの錚々たる企業を渡り歩いてきたことで有名な尾原和啓さんの新著(2020年7月)。
タイトルは、『あえて数字からおりる働き方』
読んでいる途中から、何かやり始めたくて、あるいは自分がやっている仕事を深く考えたくて、ウズウズしてきました。
本書を読む前日に、埼玉県寄居町に住む知り合いの起業家の話を聞く機会がありましたが、彼も本書と同じようなことを話していたのでビックリ。
本書の中に、「地頭の良い」人の共通点が述べられているのですが、まさにそういうことなのかなあ。
『あえて数字からおりる働き方』というタイトルは、一見ゆるさをイメージさせますが、内容は甘くありません笑
「個人がつながる時代の生存戦略」という副題や帯にあった「変化の時代にゆるがない武器を手にいれる」というコピーに、強いメッセージ性を感じます。
本書を読むと、「ギブ」の本当の価値がよく分かります。
なぜギブする人が成功するのか?
その答えは「与える」という直訳からでは決してわかりません。
「相手の視点に立って、自分の外側にあるモノに自分の思いを乗せてギブすること」が大事だといいます。
この「相手の視点に立って」ということがポイント。
自分軸で、ただ「あげる」ということではないんですね(汗)
それとも関係しますが、誰か会いたい人がいるとき、まずは「相手のことをよく知る」ことが力説されていたのも印象的です。
相手のことをよく知ると、その人が何を考え、何に関心があるのか、どんな情報を欲しがっているか、何をしたら喜ぶかがわかってくるというのです。
私は、企業訪問をするときなどは、どんな企業なのか、何をしているのかを下調べしてから訪問します。
こちらから「会いたい!」といって会うのですから、相手のことをロクに知らずに行くのは失礼極まりないことだからです。
このことは、考えてみれば個人相手でも同じです。
つい忘れてしまいがちですが、改めて大事なことだと思いました。
尾原さんのやっている相手をよく知るための行動はハンパない!
いきなり全部マネするのは難しいですが、その心は見習いたいですね。
前半は、人とのつながり方が中心で、いかに信頼を得ていくかという視点が強いでしょうか。
後半は、どちらかというと「自分」にフォーカスして、いかに「好き」を活かすかということかというポイントが書かれています。
久しぶりにじわーっと染み入って、ワクワクする本に出合えました
なんか心がスッキリしました。
(教えてくれた友人に超感謝!)
ただ、本書にもあるとおり、そこで終わってはもったいない!
知って、理解して、自分の行動に落とし込んで「やってみる」からこそ、そこから学びが生まれます。
(こう思えたのも、友人から本書を教えてもらって、自分で買って読んだからこそ)
なので、やってみます!
はっきり何とはまだ言えませんが、ワクワクしてきたぞー!
本書のまとメモ
(↓ここからは、本書のまとメモです)
「役に立つ」から「意味がある人」へ
・「役に立つ」から「意味がある人」が生き残る時代(山口周『ニュータイプの時代』)
・機能は、情報化社会の中では簡単にコピーできてしまう
→ あっという間に追いつかれ、安売り競争。競争過多
・「他の誰かではなく、あなたに仕事を頼みたい」という、誰かにとって意味がある存在になる
→ その積み重ねで、たくさんの人の「意味のある」存在となり、最終的に「何者かになる」
変化の時代にゆるがない武器
・かつては、近くにいる同質な仲間とスクラムを組んで走ることが成功ルール
・変化が激しく、昨日までの正解が突然通用しなくなる時代においては、遠くの人とゆるくても意味のある絆で多様につながっているほうがいい
・「依存しない」のではなく、「複数に依存先を増やす」こと、たとえ少数でも、遠くの人たちから「あなたを助けたい」と思ってもらえるような、意味のある存在になること
⇒ 「複数に依存先を増やす」ことを目指すのは、ビジネスにおける顧客づくりと似ている
「組織から個人」の時代に本当に必要なこと
・今の時代に必要なことは、顧客に「あなたが好きだから」「あなたにしかできないから」「私のことをよく知っているあなたなら、信頼できるから」、”だから一緒に仕事がしたい”と思ってもらえる人材であること
→ これからの働き方で大事なのは、「あなたは誰にとって意味のある存在ですか?」という問い
であり、その答えを持てる存在になること
・未来の人のあるべき助け合いは、自助、互助、共助、公助の4段階
→ 日本人にはまず互助と共助が必要
・物理的な距離に関係なく互助・共助のつながりを持つことのメリット
①価値観の相対化ができる
②遠く離れているからこそのサポートができる
・人を疑うことこそ、無駄なコスト(グーグル)=ハイパー性善説
→ 人を疑うコストがなくなれば、情報の伝達や人との出会い、コミュニケーションが早くなる
⇒ 行政の問題点はここかもしれない。「公平・平等」が是とされるため、遅い。
どんなに関係が深くても同列の扱いをせざるを得ない。究極の性悪説なのかも。
・信頼関係が築けてくると、購入することへの不安がなくなる
→ 信頼しあえる関係では、何をしても低コスト
「ギブ」を仕事の基本にする
・2種類のギブ
①自分の内側にある力で、人にありがたいと思われること
②相手の視点に立って、自分の外側にあるモノに自分の思いを乗せてギブすること
→ 本書でいうギブは2つ目
→ 相手の視点でものを考える
・目の前の誰かにとっての「何者か」になることを、幾通りも繰り返すことによって「みんなにとっての何者か」になれる
・ギブで得た視点こそが、あなたの最大の資源になる
→ 他の人にはない「着想」こそ、混乱の時代において有効な「資源」
・「地頭の良さ」=常に目の前の物事に好奇心と疑問を持ち続け、それを鍛え続ける力
・これからは、演繹法と帰納法の中間のアブダクションが求められる
→ 少数のデータから帰納法で特徴の仮説を出し、その仮説に基づいて小さな演繹法で他の異なる
グループに転用することで、仮説を検証するという高速ループを回すこと
・ギブは最も小さなアブダクション
→ 相手の視座に立って学ぶことで、「新たな着想を得る」ことこそ魂にとって一番のご馳走
→ 着想を得るために最も重要なことは、自分からより遠いものを掛け合わせること
・ギブで勝ち筋を見出す
→ 自分にとっての当たり前は、居場所を変えれば誰かの「ありがとう」につながる
・「与える人が一番学べる」
・人が面白いと思う情報、生きた情報をどう見抜くか
→ 「IREE」の問い(パトリック・ニューウェル)
①それは面白いか?(Is it Interesting?)
②それは意味を成しているか?(Is it Relevant?)
③夢中になれるか?(Is it Engaging?)
または、夢中になっている人はいるか?(Is the person Engaged in it?)
④人々がエンパワーされているか?(And are the people Empowered?)
・質問は、それそのものが情報をギブする行為
オンラインで自然につながりをつくる僕の方法
・まずは相手をよく知ることからはじめる
→ 自分の何をアピールするか、というよりも、相手のことを知って、そこに何を提供するか
・心の居場所としての空間や時間をインターネットに持つことは、同調圧力の中で苦しむ多くの人にとって、健全に生きていく上での保険ともいえるくらい、重要な習慣になり得る
・「好き」でつながると、自分でも何かを発信したくなる
→ 「人と違って良いのだ」という自己肯定や、「人と違う感覚を誰かと共有できるんだ」という
快感や成功体験を小さく積み重ね、育んでいくことで浮き上がってくるのが「個性」
オンラインファーストの時代に自分の武器を見つける
・「生きがい」=「あなたが好きなもの」「世の中(誰か)が必要としているもの」「対価を得るに値するもの」「あなたが得意なもの」の交点(ikigaiの図)
・新社会人の場合、得意なことを探したり磨いたりする前に、まずは目の前の仕事に誰よりも熱意をもって時間を投下し、会社やお客さんが「これならお金を払ってもいい」と思えるものをつくり上げることに集中したほうがいい
→ ライスワークの基盤をしっかり整え、周囲の信頼を得ることからはじめたほうが結果的に早い
→ 生きがいで食べていくためには、前提として「信頼される人物であること」が最も重要
・何をギブしていけばいいか
→ 「努力」の娯楽化(一橋大学 楠木教授)ができているものを探す
・「好き」は他人から認められなくてもいい
→ 自分の「好き」を見つけていくときは、「他者の承認」を一旦脇に置いておく必要がある
→ 誰もが共感することや承認されることに、無意識に価値観が寄っている
→ 多くの人は、意識的に無菌室の状態をつくらなければ、自分が何を好きかを見失ってしまう
ほどの、もしくは夢中になれる暇もないほどの、膨大な情報量と承認欲求への誘惑の中で生活
していることを認識する
・「好き」をギブにつなげる
→ 3つの「E」
①Extract(抽出する)・・・一見同じものでも、より細かな視点をギブする
②Expand(拡張する)・・・相手の視点に、「好き」だからこそ見える自分独自の視点を
掛け合わせてアイデアを拡大する
③Express(表現する)・・・「好き」が他の人を引きつけるほどのレベルになると、
「好き」そのものがギブになる
⇒ ③の好例は、さかなクン
変化の中で自分らしい生き方を設計する
・変化の時代に必要な「学習」とは、自ら課題を探し出し、設定し、解決するための方法を自らつくっていく「学習」
・イノベーションを起こす天才の多くは、「学び方を学ぶ天才」
・アンラーニングで過去の成功方程式を意識的に捨てる
→ 自分の学びの限界を常に把握するためには、過去の成功方程式が通用しない世界を知り、常に学び続けるために、古い学びを捨てていく勇気を持つことが大事
・ライフワークで食えなくてもいい
→ ライフワークは魂のごちそう。これがあれば楽しく生きられる
→ 一番大事な視点は、自分にとってそれが楽しいかどうか、幸せかどうか
・人の成長を阻む一番の要因は、他人の目や失敗を恐れてチャレンジしなくなること
・ライフワークを持つことは、「好きなことで食べる」ことがゴールではない
→ 複数の視点を持ち、自分なりの物差しをもって生きるためのプロセスにつながる
・「ジョブクラフティング」=自分の仕事を自ら設計し、仕事に対する意識や気持ちを変えていく3つの方法
①社会的交流の質や量(範囲)を見直す
②仕事の意義を拡げる(目的を大きな範囲から見直す)
③仕事の内容に手を加えてみる(課題を変える)
⇒ 起業家は典型的なジョブクラフター
・振り返りの基本ループ
①客観的事実
②主観的感想
③一般化(敷衍)
④適用
→ 「やってみる」が大事
→ どうやって自分の行動に落とし込めるか
⇒ ジブンゴト化する