経営者としてすべきこととは

私はミニ起業家です。
ミニ起業家とは、従業員を雇わずに、一人経営者として仕事をする起業家のことです。

そのため厳密には本書でいう「組織」のようなものは持っていません。
ですが、一人の「経営者」であることは確かです。

また、起業する前は、市役所という組織の中で仕事をしていましたし、もしかしたら今後「組織」のようなものを持つことになるかもしれません。

『世界標準の経営理論』という分厚い本の読書会に参加した頃から、「経営」とか「経営学」について興味を持つようになっていましたので、この機会に古典とか名作といわれる著書からも学んでいこうと思います。

ドラッカーは比企起業塾の課題本にもなっていて、以前から気になっていました。
まずはドラッカーから始めていきます。

本書で最もインパクトが大きかった言葉は次の2点です。

  • まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない。
  • 「私は」でなく「われわれは」を考える

これらについて順に考えていきます。

まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない

本書にはこのようにありました。

問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。もちろん問題を放っておくわけにはいかない。隠しておけというわけではない。しかし問題の処理では、いかにそれが重大なものであろうとも、成果がもたらされるわけではない。損害を防ぐだけである。成果は機会から生まれる。
 まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない。組織の内と外に変化を見つけ、機会として使えるかどうかを考えなければならない

これはまさにミニ起業家として常々感じていることです。

たとえば分かりやすい例として、昨年度の初めに新型コロナによる緊急事態宣言が発令されました。
このとき外出自粛が盛んに叫ばれ、飲食店や観光産業などが大きな影響を受けました。
そのため多くのメディアでは「脅威」として報じられました。

私は起業したばかりでしたので、売上という意味ではもともと減るものがないので漠然とした不安を抱くのみでしたが、そんなときにご依頼をいただいたのが「オンライン研修の技術サポート」というお仕事でした。

ご依頼者様が何を考えたのかというと、「外出自粛のため集合型の人事研修ができない。でも集まる必要がないリモート研修ならば実施できる」ということでした。
まだ今のようにZoomなどのオンライン会議ツールが広がっていない時期のことです。
それを真っ先に採用し、集合型研修が実施できない企業の要望に応えていったのです。

私はおかげでここからZoomの操作を学び、Zoomのオペレーターやオンラインでのファシリテーターという仕事に広がり、それが基となって小中学校のICT支援員の仕事にもつながりました。

コロナのような大きな変化は誰にでも同じように起こります。
その変化をどうとらえるか、変化に対してどのように対応するかということが重要なのだと身を持って体験したのでした。

「私は」ではなく「われわれは」を考える

私はかつて組織の中にいましたが、「会社のため」とか「地域のため」という考え方はあっても、「われわれは」ということを考えられていたかというと、はっきり断言はできません。

もちろん言葉として「われわれ」ということはあっても、組織全体の貢献ということを意識できていたかというと甚だ怪しいです。
確かに「われわれ」と口にすることで、「私の実績」という利己の感情ではなく、組織への貢献=組織の成果に目が向くというのは分かる気がしました。

本書には次のようにあります。

成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える

貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける

成果は組織の中ではなく、外にあるというのも目から鱗でした。
確かに利益のもととなるお金はお客さんからしか頂くことはできません。

そのためには足の引っ張り合いとか、成果の奪い合いではなくて、組織に貢献することで全体の成果をあげることを考えていく必要があるんですね。

それはイコールお客さんの満足とか、幸せの実現といったことへの貢献にもつながります。

私は今は個人事業主なので、つい「私が私が」となってしまいがちですが、チームで仕事をする機会も多くあります。
「わたしは」ではなく「われわれは」を考えるということは、ぜひ心掛けていきたいと思います。

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以下は本書のまとメモです。
気になった部分を抜粋しています。

「⇒」は個人的なメモ。

まとメモ

・ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である

序章 成果をあげるには

・成果をあげる人の8つの習慣
 ①なされるべきことを考える
 ②組織のことを考える
 ③アクションプランをつくる
 ④意思決定を行う
 ⑤コミュニケーションを行う
 ⑥機会に焦点を合わせる
 ⑦会議の生産性をあげる
 ⑧「私は」でなく「われわれは」を考える

・成果をあげるには、このように自らが得意とするものに集中しなければならない。トップマネジメントが成果をあげれば組織が成果をあげ、トップマネジメントが成果をあげられなければ、組織も成果をあげられないからである

・アクションプランとは意図であって、絶対の約束ではない。拘束ではない。一つひとつの成功が新しい機会をもたらし、一つひとつの失敗が新しい機会をもたらすがゆえに、頻繁に修正していくべきものである。事業環境、市場、組織内の変化についても同じことがいえる。それらの変化がアクションプランの修正を求める。アクションプランなるものはすべて、柔軟性を当然のこととしなければならない

・アクションプランは行動に移さなければならない

・意思決定が意思決定になるためには、次の4つのことを決めなければならない
 ①実行の責任者
 ②日程
 ③影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人
 ④影響を受けなくとも決定の内容を知らされるべき人

・意思決定とはトップが行うものであり、トップが行う意思決定だけが重要であるかのごとき議論がある。大きな間違いである。・・・知識を基盤とする組織では、それぞれの意思決定が重要な意味をもつ

・問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。・・・成果は機会から生まれる。・・・まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない。組織の内と外に変化を見つけ、機会として使えるかどうかを考えなければならない

・会議は懇談ではなく仕事の場としなければならない。会議の生産性をあげるには、事前に目的を明らかにすることが必要である

・「私は」とはいわずに、「われわれは」と考え、「われわれは」ということである

第1章 成果をあげる能力は修得できる

・成果をあげることがエグゼクティブの仕事である。成果をあげるということは、物事をなすということである。・・・エグゼクティブは常に、なすべきことをなすことを期待される。すなわち成果をあげることを期待される

・特に重要なこととして、組織の中に成果は存在しない。すべての成果は外にある。企業の場合、顧客が製品やサービスを購入し、企業の努力とコストを収入と利益に変えてくれるからこそ、組織としての成果がある

・組織は存在することが目的ではない。種の永続が成功ではない。・・・外の環境に対する貢献が目的である

・仕事と成果を大幅に改善する唯一の方法が、成果をあげる能力を向上させることである

・われわれは、一つの重要な分野で強みをもつ人が、その強みをもとに仕事を行えるような組織をつくることを学ばなければならない

・成果をあげることは一つの習慣である。実践的な能力の集積である。実践的な能力は修得することができる

・成果をあげるために身につけておくべき5つの習慣的な能力
 ①何に自分の時間がとられているかを知ること
 ②外の世界に対する貢献に焦点を合わせること
 ③強みを基盤にすること
 ④優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中すること
 ⑤成果をあげるよう意思決定を行うこと

第2章 汝の時間を知れ

・成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする

・時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除するための方法
 ①する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てること
 ②他の人間でもやれることは何かを考えること
 ③自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除すること

第3章 どのような貢献ができるか

・成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える

・貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける

・あらゆる組織が3つの領域における成果を必要とする
 ①直接の成果
 ②価値への取り組み
 ③人材の育成

・ビジョンや能力や業績において、今日の水準を維持しているだけの組織は適応の能力を失ったというべきである。人間社会において唯一確実なものは変化である。自らを変革できない組織は明日の変化に生き残ることはできない

・貢献に焦点を合わせることによってよい人間関係がもてる。そうして人間関係が生産的となる。生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である

・貢献に焦点を合わせることによって、組織の内部における努力、仕事、諸々の関係から、組織の外部すなわち組織の成果に目を向けることができる。市場、顧客、地域の患者、一般市民など外部の世界と直接関係をもつことができる

・貢献に焦点を合わせるということは、つまるところ、成果をあげることに焦点を合わせることである

第4章 人の強みを生かす

・成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。・・・強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。・・・人事において重要なことは、弱みを最小限に抑えることではなく強みを最大限に発揮させることである

・自らを含め、あらゆる人を機会として見なければならない。強みのみが成果を生む。・・・弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない

・リーダーこそ強みに基づいて仕事をしなければならない

第5章 最も重要なことに集中せよ

・成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない

・集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である

第6章 意思決定とは何か

・成果をあげるには意思決定の数を多くしてはならない。重要な意思決定に集中しなければならない。個々の問題ではなく根本的なことについて考えなければならない

・意思決定の5つのステップ
 ①問題の種類を知る・・・一般的な問題か例外的な問題か
 ②必要条件を明確にする・・・決定の目的、達成すべき目標、満足させるべき必要条件は何か
 ③何が正しいかを知る・・・満たすべき必要条件を満足させるうえで何が正しいか
 ④行動に変える
 ⑤フィードバックを行う

第7章 成果をあげる意思決定とは

・エグゼクティブが直面する問題は、満場一致で決められるようなものではない。相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択があって初めて、よく行いうる。したがって、決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである

・意見の不一致が必要な3つの理由
 ①組織の囚人になることを防ぐ
 ②選択肢を与える
 ③想像力を刺激する

・意思決定をする能力は、知識労働者にとってまさに成果をあげる能力そのものである