滑川町エコミュージアムセンターにいってきました

唐突ですが、とある理由があって、埼玉県比企郡滑川町にあるエコミュージアムセンターにいってきました。

滑川町は、埼玉県の中央よりもやや北寄りの比企郡にある町です。
県内の人には国営武蔵丘陵森林公園があることでよく知られています。

エコミュージアムセンターは、国指定の天然記念物であるミヤコタナゴを飼育・繁殖して絶滅から守り、野生復帰させることを目的とした施設です。
ミヤコタナゴというのは、コイ科の淡水魚です。

(が、肝心のミヤコタナゴの写真がうまく撮れておらず・・・また行かねば。)

ミヤコタナゴはもともと関東地方に広く生息していましたが、都市化とともに姿を消し、昭和49年に国の天然記念物に指定されました。
県内では絶滅したと思われていましたが、なんと偶然にも滑川町の沼で生き残っていたのが発見されたんだそうです。

滑川町には、大小さまざまな「沼」が多く見られます。
これは田んぼの灌漑用に人工的に造られた「ため池」で、今でも町内の田んぼの約8割が沼の水に依存しているそうです。

このあたりは沼が多い地域なのですが、特に滑川町は関東で一番、沼が多い町なんだとか。
その数は、大小合わせて約200。
その2割ほどが、森林公園の園内にあります。

滑川町では、沼を守る伝統行事の「沼普請」が行われていたおかげではないかといわれています。
・沼普請でコイなどの大型魚が捕獲されて、タナゴのような小さい魚の繁殖に適した環境が守られたこと
・沼普請のたびに水が抜かれ、泥さらいや沼干しによって、ミヤコタナゴの繁殖に欠かせない二枚貝の生息に適した環境が守られたこと(ミヤコタナゴは二枚貝に卵を産みつける)

毎年秋には、「森林公園沼まつり」が開催されており、伝統行事の単なる再現にとどまらず、地域の自然や文化を守る知恵を今に伝えているんだそうです。

そんなわけでミヤコタナゴは、”滑川町の自然と文化のシンボル”となっているんですねー。

環境教育に大きなポテンシャル!

博物館施設には、ざっくり大きく3つの機能があります。
それは、保存機能、研究機能、教育機能です。

保存機能とは、対象となる特定の事物を収集・保管を行うこと。
エコミュージアムセンターの例でいえば、ミヤコタナゴがその対象の中心といえます。

研究機能とは、文字どおり収集した事物の研究を行うこと。
エコミュージアムセンターでは、ミヤコタナゴの野生復帰のための飼育、繁殖などもこれに含まれるでしょう。

教育機能は、収集した事物を保管・研究した上で、事物とともにその研究の成果を広く公開することです。

ですが、日本の博物館は、保存機能の役割は果たしているけれども、研究機能、教育機能が弱いところが多いです。
特に、市町村単位の博物館や資料館などでは、学芸員資格を有している専門の職員が配置されないことも多々あり、学芸員としての職務に加えて、切れた電球の交換などの日常的な雑務をこなさなければならず、「雑芸員」などと揶揄されています。
欧米の「キュレーター」は大学院修士号がほぼ必須とされるような専門職であることからすると、日本とはかなり差がありそう・・・

何を隠そう、私も学芸員の有資格者であり、保存・研究・教育という3機能を持つ仕事に魅力を感じたのですが、自分の専門分野(民俗学)で博物館に勤めるというのはなかなか狭き門でした。
専門分野と違うとはいえ、こんな形で博物館施設に関わることになるとは、人生って不思議なものですねえ。

で、エコミュージアムセンターですが、保存・研究機能についてはしっかりと役目を果たしているようです。
というか、地域の特性に根差したニッチな取り組みは本当に素晴らしい!

でも、教育機能に関してはどうでしょうか?
一応、町内の小学校などと連携した環境教育事業も行われているようですが、その様子が目に見える状態になっているとはいえないようです。
何より、現状ではホームページもありません。

これではせっかくのいい取り組みも、単発単発になってしまうし、広がりも限られもったいない!
少なくとも研究成果や環境教育の活動状況の様子をWeb上で発信していけば、他の専門家や研究機関、大学などからのアクセスも容易になり、連携の可能性が出てくるのではないかと思います。

また、活動を継続することで、過去の実績が積み重なっていきますので、それがストックとして財産にもなります。

それによって活動に関わる人たちの自己効力感や地域への愛着が育まれたり、センター内部における業務の引継ぎも容易になるなど、一味違った事業の広がりや深まりが期待できそうです。

何より、学校の内部だけでなく、地域と学校のつながりによる地域教育は、私が興味を持っているテーマの一つでもあります。
今回のプロジェクトが実現すれば、博物館、地域教育、地域での仕事など、いろいろな意味でおもしろくなりそうですね!

そして、滑川町の起業家である栗原さんと、最近よく話題になる「~社中」。
その第一弾、第二弾の事業としてスタートできるよう、楽しみながら事業化を目指していきます!!!

勝手にエコミュージアムセンターギャラリー

水槽、展示

実験室(展示室から)

中庭のビオトープと水辺

ラウンジ、ビオトープ周辺のテラススペース

このへんにカフェなどを設けたら、ちょっとしたオシャレ空間になりそうです。

エコミュージアムセンター周辺

これだけのスペースを持つ壁をもったらかしにするのももったいない。
子どもたちに壁画を描いてもらうと、周りの緑の中で映えるでしょうし、滑川町内の企業の広告スペースとして商業的に活用して、財源の確保策として使うこともできそうです。