農林水産省主催「農村プロデューサー養成講座」第4回を受講しました

「農村プロデューサー養成講座」とは、農林水産省が「地域への愛着と共感を持ち、地域住民の思いを汲み取りながら、地域の将来像やそこで暮らす人々の希望の実現に向けてサポートする人材」である農村プロデューサーを育成するための講座です。

コースは、「入門コース」と「実践コース」の大きく2つで、「入門コース」は誰でもオンラインで受講することができます。
「実践コース」は、「講義」「実践を基にした模擬演習」「研修生自らの実践活動」という3段階で、こちらは受講申し込みをした上で選考があるそうです。

農村プロデューサーに関する詳細はこちら(農林水産省のページにリンクしています)

入門コースでは、いろいろな地域の取り組み事例を学ぶというもので、各回でさまざまな講師が登場しますので、まずはこちらを受講することにしました。
初回、第2回、第3回に続き、農村プロデューサー養成講座(入門コース)の第4回(民間分野)を受講しました。

入門コース全6回の講師陣は以下のとおりです。

  • 第1回(総論分野) 小田切徳美さん(明治大学農学部教授) ← 第1回記事はこちら
  • 第2回(イノベーション分野) 谷中修吾さん(一般社団法人 INSPIRE代表理事/BBT大学教授) ← 第2回記事はこちら
  • 第3回(行政分野) 澤畑佳夫さん(地方考夢員©研究所所長) ← 第3回記事はこちら
  • 第4回(民間分野) 河村玲さん(株式会社 良品計画ソーシャルグッド事業部 スペースグッド担当部長) ← 今回はココ
  • 第5回(都市農村交流分野) 永岡里菜さん(株式会社 おてつたび代表取締役)
  • 第6回(地域実践分野) 多田朋孔さん(特定非営利活動法人 地域おこし事務局長)

今回の講座では、「からまりしろ」というおもしろいキーワードも出てきました。
関係人口でいう「関わりしろ」に似ているので興味が湧くところです。

第4回の内容に関するメモを以下に記録します。

「⇒」は個人的な意見です。

良品計画が目指す地域との関わり方とは

第4回 講師:河村玲 氏、松本菜乃花 氏(株式会社良品計画)

良品計画が目指す経営

●良品計画が目指す経営
・全社の大戦略「地域社会の役に立つ」
・「感じ良い暮らしと社会」に向けた地域活性化事業を実施
・グローバルに貢献する「個店経営」の集団
・超小売人材の育成
・日常生活にもっとも必要な暮らしの基本を提供する

●「感じ良い暮らしと社会の実現」ための事業例
・千葉県鴨川市の棚田保全活動
・千葉県鴨川市 直売所併設店
・千葉県南房総市 白浜校舎(廃校)を活用した小屋事業
・枚方駅のリノベーション
・MUJI HOTEL 銀座、中国2拠点
・ガチャ(自動運転バス)の外装デザイン


農村プロデューサー養成講座(入門コース)第4回資料より

地域との関わり方

●地域共創型
・地域共創型の店舗づくりに取り組んでいる
・公共交通事業者とコラボして、直江津市のショッピングモールに世界最大の店舗(2000坪)を開設
・一方で市街地にも50坪の店舗など
・地域に密着した居住エリアでも、スーパー併設店などを展開

山形県酒田市での移動販売の取り組み(松本氏の実践から)

●「からまりしろ」
・中山間地の活性化、買い物支援として、軽トラックを使った移動販売
・研修での関わりから、酒田市に移住
・地域の「からまりしろ」になることを目指す
・「からまりしろ」=その土地と脈絡のない都市部から来た無印良品が、そのまち、住まう人々、その土地の風土、自然環境が絡み合う余地をつくる存在となり、まちづくりを一緒に歩んでいく共存関係

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第4回資料より

●移動販売
・11の集落を1日で巡る
・出張青空cafeにも
・人が集う場所(コミュニティ)の形成につながっている
・小さな経済活動からコミュニティへ
・課題は公共施設や公共空地での出店が多く、本当の意味での買い物弱者に届いていない懸念

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第4回資料より

●波及効果
・市街地からも来てくれる人が増えた
 ⇒ 他地域での出店要望も
・人に集まってもらいたい場所での出店

●地域での活動で心掛けていること
①地域での暮らしを楽しむ
②感謝の気持ちを言葉にして伝える
 ・興味を持って取り組んでいると助けてくれる人がいる
 ・地域の人と同じ困りごとを体験することが非常に重要

●良品計画が考えるコミュニティセンター
・からまりしろとなって、地域に巻き込まれ、喜ばれる場

「関わりしろ」と「からまりしろ」

今回の講座で印象的だったことは、やはり「からまりしろ」というワードでしょう。

関係人口を巡る議論では、似たような言葉として「関わりしろ」とがあります。
こちらはソトコト編集長の指出さんが提唱したもので、地域にある自分が関わる(または関わりたいと思うような)余白を指す言葉です。

一方、「からまりしろ」は、メモにあるとおり、その土地と脈絡のない都市部から来た無印良品が、そのまち、住まう人々、その土地の風土、自然環境が絡み合う余地をつくる存在となり、まちづくりを一緒に歩んでいく共存関係という意味で使われていました。

あえて違いを上げるとすれば「関わりしろ」が地域側が用意するもの、あるいは地域側にあるものという意味合いを感じるのに対して、「からまりしろ」はどちらかというと、自分から能動的に関わって「関わりしろ」をつくっていくというようなニュアンスが込められているような気がします。

おそらく後半の共存関係につながるという部分に関しては、共通しているのではないかと思います。
どちらにせよ、地域と自分との具体的な関わり方とか役割を生むもとになっている概念であるということがいえそうです。

地域との具体的な関わり方や自分の役割といったことを、自分の課題意識や興味関心に引き付けていかに見出すか、あるいは地域の側に寄り添って同じ問題意識を共有できるかということがポイントになるのではないかと思いました。