コーホート図で年代ごとの人口増減を見る
今回は、先日取り上げた『「豊かな地域」はどこがちがうのか』で紹介されていた「コーホート図」を使って、いろんな地域の人口の増減を見てみたいと思います。
※『「豊かな地域」はどこがちがうのか』の読書記録はこちら。
コーホート図とは、「ある集団のある期間における人口変化を示した図」のことです。
ここでは、本書を参考にしながら、国勢調査の結果を用いて、2010年(平成22年)から2015年(平成27年)までの5年間における各年代ごとの人口増減を見てみようと思います。
(直近では令和2年に国勢調査が行われていますが、まだ結果は出ていないようです)
第1回目は、大きなところから、まず埼玉県全体と埼玉県の市部と郡部それぞれの総数を見ることにします。
コーホート図のつくり方の手順
コーホート図のつくり方の手順は以下のとおりです。
①5歳階級別人口データを5年間隔で用意する(2015年と2010年の国政調査のデータを使用)
②調べたい地域の5歳階級別人口データをダウンロードする
③新しい調査年の年代別人口から、古い調査年の5歳下の年代の人口を差し引く(同じ年代の人口ではなく、5歳下の年代の人口を差し引くという点に注意)
④横軸を年齢階級、縦軸を増減人数として、それぞれの年代の増減数を折れ線グラフで表示する
なお、各年代の特徴はおおむね以下のとおりとします。
5~9歳:小学生期
10~14歳:小学校高学年・中学生期
15~19歳:高校生・大学生期
20~24歳:大学生・就職期
25~29歳:就職期
30歳代前半、後半、40歳代前半:子育て世代
40歳代後半以降:以降5歳ごと表記
埼玉県・市部・郡部のコーホート図
埼玉県
まず埼玉県全体のコーホート図です。
こんな感じになりました。
ここから読み取れる状況は以下のとおです。
・大学生・就職期(20~24歳)までは、男女ともに人口増が大きい
・就職期(25~29歳)になると、大きく人口減少に振れる
・この年代間の振れ幅が大きい
・55~59歳あたりから徐々に人口は減少に向かうが、85~89歳の減少が最も大きい
大学生・就職期と就職期の振れ幅に着目すると、埼玉県は首都圏に位置するため、東京などへの就職や引っ越しなどが影響していることが推測されます。
埼玉県(市部)
次は埼玉県の中でも市部だけを合計した人口のコーホート図です。
市部というのは、小川町やときがわ町などの「町」や東秩父村を除いた行政区としての「市」だけを合計したものです。
埼玉県では、人口の90%以上が市部に居住しているということもあって、ほぼ埼玉県と同様のコーホート図になりました。
ここから読み取れる内容も、埼玉県全体のものと同様といっていいかと思います。
埼玉県(郡部)
次は、市部を除いた郡部、つまり町と村の合計のコーホート図です。
こちらは埼玉県全体や市部とは異なった形のコーホート図になりました。
なんとすべての年代で「0」を下回る、つまり減少しています。
なんとなく予想はついたものの、こうして見るとなかなかショッキングな形です。
特に25~29歳の就職期の落ち込みが最も大きくなっているのが特徴的です。
また、その前後の20~24歳、30~34歳の年代も大きく減少しています。
25~29歳の年代の減少が大きいというのは埼玉県全体に共通する特徴といえそうです。
また、人口の減少に悩む郡部にとっては、若年層の人口減が課題になっている状況も確認できます。
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コーホート図もRESASと同様に、一つのデータにすぎません。
これをつくることよりも、ここからどんな仮説を立てて、どんなことをしたいのかが最も重要なことだと思います。
今回はあくまでコーホート図の導入編ということで、詳しい分析にまで踏み込みませんが、各年代別の人口の増減を見ることで、これまでの単純な人口の推移だけではわからなかった地域別の特徴が見えてきそうです。
このようなやり方は今までやったことがなかったので、なかなか興味深いです。
次回からは、練習として、個別の自治体を取り上げて、それぞれのコーホート図から地域ごとにどのような特徴があるのかについて見ていきたいと思います。