鳩山高校での「宇宙の事業」
2022年6月20日(月)、埼玉県比企郡鳩山町にある県立鳩山高等学校(以下「鳩山高校」)にて「宇宙の授業」が行なわれました。
鳩山高校と、高校近くにある地球観測センターの管理者である一般財団法人リモートセンシング技術センター(RESTEC)さん、東京電機大学さんによる地域連携の取り組みです。
宇宙にちなんだ施設があるという地域の特性を活かして、鳩山高校独自のプログラムができないかということで、鳩山高校さんから相談があり、短い準備期間でしたが実現することができました。
対象は3年生93人と先生方8人。
私は事務局のRESTECさんのサポートに入りました。
鳩山高校さんからのご要望を踏まえた今回の取組の目的は以下のとおりです。
【目的】
- 高校外部の地域の方と連携したプログラムをつくる
- 地球観測センターという「資源」を活用し、地球観測を自分たちの身近な話題に落とし込む機会とする
- 生徒はもちろん、教員たちにとっても、探究型学習という新たな形態の学習方法を試行する
- 生徒の聴く、書く(メモを取る)、調べる、話す(発表する)力を養う
- 外部講師と交流することで、社会への視野拡大を図る
この目的に沿って、以下の流れで進めることとしました。
(1)演習① アイスブレイク
「宇宙」と聞いて思い浮かべることをなるべく多く書き出す
(2)講義
講師:東京電機大学 島田政信先生
(3)演習② グループワーク
2000年・2010年・2021年の衛星写真をもとに、「気づいたこと」を書き出し、グループで話し合う
(4)演習③ 発表
演習②で気づいたことをグループごとに発表する
(5)総括
(1)演習① アイスブレイク
「宇宙」と聞いて思い浮かべることをなるべく多く書き出す
まずはウォーミングアップとして、1分間で自分の中の「宇宙」に関するイメージを思い思いに書き出していきます。
正解はないので、とにかくなるべく多く書き出してもらうことを目指します。
せっかくなので私も一緒にやってみました。
- ギリシャ神話
- 星座
- さそり座
- 月
- 太陽
- 銀河
- 銀河鉄道999
- 聖闘士星矢
- ドラゴンボール
- M78星雲
- ウルトラマン
ファンタジーによりましたね・・・
生徒さんのワークシートを覗き込むと、「惑星」「とてつもなく広い」「ブラックホール」「ビックバン」などの言葉が並んでいました。
(2)講義
東京電機大学の島田先生による講義です。
島田先生はJAXAでも働いていたこともある宇宙のスペシャリストでもあります。
タイトルは「宇宙からの地球の観測(環境・災害・森林変化)」。
「宇宙」というとどうしても星やスペースシャトルといった地球の外側にある宇宙を思い浮かべますが、今回の主題は「宇宙から地球を見る地球観測」という分野になります。
私が一番興味が惹かれたのは、まさにここ。
「宇宙」といっても、地球から宇宙を見る分野と、宇宙から地球を見る分野の2つがあるんですね。
生徒さんが演習①で書き出した言葉も、地球から宇宙を見る分野の言葉が多かった気がしますので、ギャップに戸惑った方もいるのではないかと思います。
この日は気温も高くて体育館が蒸し暑かったのですが、皆さん頑張って聞こうという姿勢が見られました。
(3)演習② グループワーク
10分間の休憩を挟んで、6・7人ごとのグループワークをしてもらいます。
2000年、2010年、2021年に撮影されたそれぞれの衛星写真を比較して、気づいたことをワークシートに書き出していただきました。
衛星写真はなかなか見慣れていないと思いますので、「鳩山高校がどこにあるか」という身近な問いかけから写真の見方に慣れていきました。
でも皆さん、いつも通っているだけに高校の場所はすぐにわかったようです(さすがです!)
聞いてみると鳩山町在住の方は意外に少ないようで、町外から通ってきている生徒さんが圧倒的に多いんだそうです。
それでも2年以上通ってきただけに、鳩山町のこともそれなりに詳しそうです。
島田先生の講義で聞いたことがしっかり頭に残っているようで、衛星写真を見て
「森林伐採しすぎじゃね?」
「家が増えてる」
「この大きい建物なんだろう?」
「これゴルフ場? こんなにあるの?」
など、よく話し合っているグループも見られました。
中でも嬉しかったのは、島田先生のところに質問する生徒が複数いたこと。
実は、始まる前は「質問は出ないんじゃないかな」と心配されていた島田先生。
わざわざ来て質問してくれたことに、島田先生も喜んでいるようでした。
(4)演習③ 発表
グループで出た意見を代表者に発表してもらいました。
- 緑が減って、建物が増えた
- 大きな建物が増えた
- ゴミ焼却場ができた
- 良品計画の大きな倉庫ができた
- 田畑が減った
- ソーラーパネルができた
- ゴルフ場が増えて環境破壊では
- 写真の見え方が違う
- 撮影した衛星の名前が違う
2000年、2010年、2021年と写真がだんだんはっきりしているのですが、それを技術の進歩だけでなく衛星の違いに紐づけられた生徒さんもいました。
2021年の写真の中でも特に目立つ白い大きな建物に注目した生徒さんが多かったようです。
こうして見ることで、良品計画さんの物流倉庫の大きさを改めて感じたようです。
(5)総括
堀校長先生からのお言葉。
(堀校長)
・みんな一生懸命取り組んでいた
・考えて、話して、書くということに取り組んだ
・これからは主体的、対話的な深い学びが主流になっていく
・気づいたことからいろいろ考えてほしい
なぜ鳩山にはゴルフ場が多いのか
なぜソーラーパネルが増えたのか
・「なぜ?」を考えることが自分の力になる
自分で気づいたことから「じゃあそれはなぜなのか?」という問いを立てることが大切というお話は非常に大きな気づきになりました。
目で見て気づいたところで終わりにするのではなく、そこから問いを立てることが本当の学びの始まりなんですね。
その言葉にハッとした様子の生徒さんもいました。
また、黒須教頭先生からも、
「みんなが一人一人しっかり取り組む姿を見ていました。頑張ったということで、みんなで自分たちに拍手」
という言葉があり、みんなで拍手する場面もすばらしいと思いました。
こういう場面を今後もっともっと増やしていきたいですね!
振り返り
全体を通じて個人的に気づいたことを振り返ってみます。
【改善点】
・一方的に話を聞く講義の時間が長い
・個人で考えをまとめて書く時間があるといい
・多少オーバーリアクションでも「良いですね!」と認める、拍手をするといい
・できたことより、取り組んだ姿勢を評価する
・先生が生徒の話し合いに入りすぎないようにする
【良かった点】
・生徒主体の時間をとれた
・グループでの話し合いができた
・質問が出た
・ほぼ予定通りの時間で終えられた
・先生方にサポートいただけた
・地域と学校の連携が生まれた
・発表に対して拍手が出た
まだまだ試行段階が多く、改善点も見つかりましたが、先生方が講義の内容に興味をもってくれたことや、先生方自身から改善案が出されるなど、今後に向けたよいきっかけがつくれたのではないかと思います。
ここで終わらず、比企つづき学校と地域の連携に関わっていければと思います!
鳩山高校の先生方、3年生の皆さん、島田先生、RESTECの皆さま、ありがとうございました!