こんにちは!
まなびしごとLABの風間です。

地域経済分析システム「RESAS」を使って、ときがわ町の人口を掘り下げてみようという試みです。
今回は、その第4回目。
ときがわ町の「人口マップ」のまとめとなります。

(地域経済分析システム「RESAS」についてお知りになりたい方は、まずこちらの投稿をご覧ください)

ここまで以下のような流れで進めてきました。

(1)ときがわ町ってどんなところ?
(2)「人口マップ」を見てみよう!
  ①人口構成 → 第1回はここまで
  ②人口増減
  ③人口の自然増減 → 第2回はここまで
  ④人口の社会増減
  ⑤将来人口推計 → 第3回はここまで
(3)どんなことがわかったか? → 今回はここ

ときがわ町の概要(おさらい)

まずは、例によってざっと「ときがわ町」の概要のおさらいから。

名称:埼玉県比企郡ときがわ町
面積:55.90k㎡
人口:10,990人(4,739世帯) ※2020年6月1日現在

場所でいうと、埼玉県のこのあたりですね。

ときがわ町は、平成18年2月1日に、旧都幾川村と旧玉川村が合併して誕生した新しい町です。

面積の約7割が森林で覆われており、東から西に向かってだんだんと山を登っていくような地形になっています。
豊かな山林を背景として栄えた「ときがわ建具」は、名品として知られており、1300年もの歴史があるといわれています。
主な文化財として、飛鳥時代に修験道の開祖である役小角が開山したことが始まりと伝えられている慈光寺などがあります。

川を流れる水がすごくきれいで、梅雨前の時期などは、いろんなところでホタルの姿を見ることができます。

「人口マップ」ここまでのおさらい

ここまでRESASの「人口マップ」機能を使って、ときがわ町の①人口構成、②人口増減、③人口の自然増減、④人口の社会増減、⑤将来人口推計を見てきました。
それぞれ簡単におさらいしておきましょう。

①人口構成

まず、①人口構成では、「人口推移」と「人口ピラミッド」という2つのグラフから、

・総人口のピークは1995年調査
生産年齢人口のピークも同じ
・年少人口のピークは1985年。それ以降の調査では減少を続けている
・老年人口は増加を続けている
・2040年には、人口がピーク時の半分以下になることが予想されている
・高齢化率がさらに高まることが予想される
・地域の担い手の年齢層が上がる

ということを述べてきました。

出典:RESAS

②人口増減

次に、②人口増減では、「人口増減」の推移や「出生数・死亡数/転入数・転出数」、「自然増減・社会増減の推移」から、

・年少人口は1990年調査から、前回調査比マイナスに転じている(人口増減)
・生産年齢人口は2000年調査から、前回調査比マイナスに転じている(人口増減)
・1998年以降は、流出数が流入数を上回っている(出生数・死亡数/流入数・流出数)
・1995年以降の調査では、死亡数が常に出生数を上回っている(出生数・死亡数/流入数・流出数)
・上記の結果、社会増減がマイナスに転じた1998年から人口減少が続いている。(自然増減は1998年以前もマイナスだった)(自然増減・社会増減の推移)

ということを述べてきました。

出典:RESAS

③人口の自然増減

次に、③人口の自然増減では、「合計特殊出生率と人口推移」と「地域少子化・働き方指標を散布図で分析」から、

・合計特殊出生率は、1.0~1.1となっており、一般的にいわれている現在の日本全体の合計特殊出生率(1.4程度)よりも低い
・1995年調査をピークに、男性も女性も人口が減少している
・有配偶出生率を見ると全国平均よりやや低い程度だが、男性の未婚率を見ると全国平均よりも大幅に高い

ということを述べてきました。

出典:RESAS

④人口の社会増減

次に、④人口の社会増減では、「From-to(定住人口)」と「人口移動(グラフ分析)」から、

・全体的に転出超過
・比企郡や坂戸市などの近隣地域との間の転出・転入が多い
・同じ比企郡の東松山市、嵐山町へは転出超過傾向がある
・同じ比企郡の小川町からは転入超過傾向がある
・2010年から2017年は、年少人口(0~14歳)純増である(2018年は純減)
・老年人口(65歳以上)はおおむね純増の傾向がある
・2010年以降、生産年齢人口(15~64歳)は純減が続いている
・生産年齢人口の減少が大きい

ということを述べてきました。

出典:RESAS

⑤将来人口推計

最後に、⑤将来人口推計では、

・老年人口の比率は今後もおおむね上昇し続けることが想定
・2025年くらいをピークに、老年人口数も減少し始める
・ときがわ町の人口は、自然増減にも社会増減にも大きく影響を受ける地域特性がある(自然増減の影響度は上から2番目の「4」、社会増減の影響度は一番高い「5」)
・ときがわ町の人口は、県内で最も自然増減、社会増減の影響度が高い部類に入る

ということを述べてきました。

出典・RESAS

どんなことがわかったか?

以上をもとに、これで「どんなことがわかったのか?」、そして「それを知ってどんなふうに考えたか?」をまとめてみたいと思います。
もちろんここに書いたことは私個人の見解ですので、これが正解とかそういうことではありません。
一つの考え方としてお読みいただければと思います。

まず私が注目したのは、

・総人口と生産年齢人口のピークは1995年調査時
・年少人口のピークは1985年。それ以降の調査では減少を続けている
・1998年以降は、流出数が流入数を上回っている
・1995年以降の調査では、死亡数が常に出生数を上回っている
・社会増減がマイナスに転じた1998年から人口減少が続いている。(自然増減は1998年以前もマイナスだった)

ということでした。
つまり、ときがわ町では、人口の自然増減のマイナスが先に起こり、その後、社会増減のマイナスが起こったことで総人口が減少に転じているということです。
そして、数的に見ても、社会増減が総人口の増減に与える影響が大きくなっていることがわかります。

また、ときがわ町の合計特殊出生率は全国平均よりも低い数字にとどまっていますが、自然増を増やすといっても出生率を上げることは簡単ではありません。
児童手当てや医療費免除など、政府や地方自治体が手を変え品を変えて取り組んでいるにもかかわらず、出生率が上がるどころか下がってしまっているのはご周知のとおりです。

となれば、人口を増やすためには、自然増減よりも社会増減にアプローチする方がいいのではないかということになりますね。

ではどこから人に来てもらえばいいのかということで、次に注目したのは、人口の社会増減です。

・比企郡や坂戸市などの近隣地域との間の転出・転入が多い
・同じ比企郡の東松山市、嵐山町へは転出超過傾向がある
・同じ比企郡の小川町からは転入超過傾向がある
・2010年から2017年は、年少人口(0~14歳)純増である(2018年は純減)
・2010年以降、生産年齢人口(15~64歳)は純減が続いている
・生産年齢人口の減少が大きい

ときがわ町は、「近隣地域との転入・転出が多い」、そして「生産年齢人口の転出が多い」のであれば、生産年齢人口の転出を少なくとどめて、転入を増やせばいいということに思い至ります。

生産年齢人口が減少していながらも、年少人口が増加した期間があるというのは明るい材料といえます。
子育て世代を惹きつける要素がときがわ町にはあるのかもしれないと推測できます。
その要素がなんなのかを明らかにすることで、生産年齢人口を増やすことができる可能性があります。

高齢化が今後さらに進行することが予想されるときがわ町にとっては、年少人口と生産年齢人口をいかに確保できるかが課題になるでしょう。

・・・とここまで書いたところで、疑問が浮かびます。

「それって、地方のどこの地域でも同じなのでは?」

そう、そうなんです。
いまや「人口減少」「年少人口や生産年齢人口の減少」「少子高齢化」といったキーワードは、特定の地域を除いて、地方圏のどの地域でもほぼ共通している課題です。

そこで他からの転入を増やそう、といったところで所詮は人口の奪い合い、ゼロサムゲームでしかないのです。
それでは真の日本の課題解決にはならないでしょう。

では一体どうすればいいのか?
ここで発想の転換が必要です。

結論からいえば、

「関係人口をつくること」

だと私は考えています。

関係人口というのは、簡単にいうと、「そこに住んではいないけれど、その地域を何度も訪れたり応援してくれたりして、地域と多様な関わりを持つ仲間」のことです。

「えっ、関係人口のデータなんてRESASにあったっけ?」と思われたかもしれません(笑)
思考が飛躍しましたのでちょっと説明させてください。

考えなければならないのは、「人口を増やすこと」ではなく、「地域を維持すること」です。
「地域を維持すること」こそが目的であり、「人口を増やすこと」はそのための手段の一つにすぎません。
他の地域から人を奪うゼロサムゲームではなく、どの地域も不幸にならない他の手段はないか、以下のような流れで考えました。

・ときがわ町から転出しても、行先は近隣地域である(特に東武東上線沿線地域)
     ↓
・近隣地域であればときがわ町の知名度はあり、アクセスも容易である
     ↓
・近隣地域(特に東武東上線沿線)は都内へのアクセス性がよく、逆に都内からもアクセス性がよい

     ↓
・近隣地域に加えて、東武東上線沿線の都内もターゲットエリアになる可能性がある(池袋から約90分)
     ↓
・住むのは無理だけど、これだけ近くにこれだけの自然がある場所なら何度も来たいと思う人はいる
     ↓
・ときがわ町のことが大好きなファンになり、ときがわ町を応援してくれるサポーター・パートナーになる(関係人口)
     ↓
・ときがわ町に住む知人や友達、仲間が増え、何かのきっかけで移住を決断できる土台がつくられる

つまり、まとめると「近隣地域や東武東上線沿線地域で、関係人口をつくろう!」ということになります。
関係人口が増えれば、地域の活性化にもつながりますし、地域の維持に必要なリソースの提供も期待できます。
また、結果として、移住にもつながりやすいということもできます。
(移住者を増やすことを目指すためでないことに注意! 移住はあくまで結果でしかない。)

あとは関係人口をつくるための「関わりしろ」をどうやってつくっていくかということを考えるだけということになりますね。(まあ、それが難しかったりもするのですが・・・)

まとめ

以上、私の考えを述べてみました。
いかがでしたでしょうか?
(本論のRESASにない関係人口にまで言及してしまうという飛躍もあって、論点が分かりづらくなったのは大いに反省ですね・・・)

今シリーズでは、RESASの「人口マップ」を使って、ときがわ町の人口について深掘りしてきました。
「“RESAS”を使ってまちを知ろう」の第1回で述べたように、RESASで見ることのできるデータはあくまでデータにすぎません。
そのデータをどのように活かすかということの方が重要です。
データから地域の課題を読み解き、仮説を立て、今後の行動につなげるということが大切ということですね。
現状や課題把握のための手段として、RESASは強力なツールになるかと思います。

いろいろ触りながら、ぜひ効率的に活用して、実のある、そして実りある施策立案につなげていきたいものですね!

次回は「産業編」にチャレンジしてみようかな。