『学校という「ハコモノ」が日本を救う!』
こんにちは。
まなびしごとLABの風間です。
今回ご紹介する本は、大竹弘和さんの『学校という「ハコモノ」が日本を救う!』。
学校を地域住民が使える場所にしようということを提案する意欲的な本。
本書に出てくる「地域交流デパートメント」という発想は非常に参考になりました。
私も日頃から、学校という施設を、教員や子どもたちだけの場所ではなく、地域住民が使えるようにしたら、廃校という問題や公共施設の維持に関する負担の増大という問題の解消につながるのではないかと考えていました。
法律上の問題ではなく、考え方ややる・やらないの行動、行動主体、関係者間の意思統一が大きな要素だということがわかります。
おそらく非常に手間も時間もかかる取り組みだと思いますが、避けて通れなくなる地域も出てくると思います。
考え続けたい問題です。
そしてチャンスがあればぜひチャレンジしてみたい!
本書の5エッセンス
まずは本書から印象に残った5つのエッセンスを抽出しました。
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学校を利用できるメリットは、びっくりするほど数多くあります。そこには広々とした校庭や体育館、それにプールもあります。さらに特別な専用室、すなわち保健室、美術室、調理室、理科室、音楽室まで備えている場所は、日本広しといえども、学校をおいて他にありません。
学校は365日、常に存在しています。しかし実は、一年のうち170日が休みなのです
学校を教員と子供だけの場所に限定するのは、あまりにもったいないといえましょう。もっと学校施設に資本を投下し、市民が使える場所に変えるべきです。
さらにいえば、街づくりの拠点は、駅周辺の施設だけではありません。もっと身近で、人を選ばないコミュニティの拠点となりうるのが、学校という「ハコモノ」なのです
⇒ 児童数が減って廃校や統合の危機に瀕している学校でも、地域住民が利用する施設になることで、施設のステークホルダー(受益者)を増やすことができる。そうすることで地域のコミュニティの継続において最も重要な学校という施設を維持することができるのではないか。
児童館、図書館、生涯学習施設、市民活動センターなど、似たような機能を持つ施設の機能を、部署を超えて、地域として残す優先度が最も高い学校に集約するという考え方
「地域交流デパートメント」では、廃校となった学校を利用するという発想はありません。既存の生きている学校という「ハコモノ」を使うのです。なぜなら、そこは昼間、子どもたちが通う場所であり、周辺には数多くの人が住む、いわば街の中心地域だからです
⇒ 廃校になる前に利用を考えたい。一度機能を失ったものを取り戻すのは困難。特に小中学校の機能は復活させるのは難しい
学校を放課後や休日に有効活用することは、実は難しいことではありません。
(学校教育法 第137条)
学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる
(社会教育法 第44条(学校施設の利用))
学校(国立学校又は公立学校をいう。)の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努めなければならない
(スポーツ基本法 第13条(学校施設の利用)※要約)
国立学校及び公立学校の設置者は、その設置する学校の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならないにもかかわらず、学校施設の有効利用が実現できない原因としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
①学校側が教師だけで対応するしかないと考えている
②行政側も暗闘者を出すことができないと考えている
③学校教育を「聖域」と捉えて、民間事業者は参入すべきでないと考えている
⇒ まずは「できる」「やる」という前提で考える。法律上は問題ない。スポーツクラブなどへの学校施設(校庭や体育館)の開放は進んでいるため、対象施設を広げること。ただこれは行政だけでは部署の所管外が含まれると調整が難しい。外部化の可能性。
筆者は「学校開放=学校貸し出し」という図式をなくしたいと思います。以下に、地域住民が学校を共同利用するかたちを規定します。
①学校教育専用施設:職員室、児童の教室、実習室など ※施設の内容に関しては学校や教育委員会で検討
②地域共同利用施設:学習室、会議室、音楽室、工作室、家庭科室、図書室、体育館、ランチルーム、求職調理室、芝生の工程など ※学校教育の授業カリキュラムを優先
③併設施設:学童保育、児童館 ※「地域交流デパートメント」が役所から運営を受託
⇒ 一つの参考として頭にとどめておく。
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このほか、本書を読んで気になった場所をまとメモとして書き出していきます。
まとメモ
プロローグ
・従来、「教育と施設は一体である」と考えて聖域化してきましたが、子どもを取り巻く環境を改善し、地域コミュニティと超高齢化社会の課題を解決していくためには、両者を明確に区別した友好的な施策が必要になります。
たとえば学校施設が、放課後や土曜日・日曜日に、子どもから高齢者までが集える学習やスポーツの場に転じたとしたら、地域社会は大きく変わります。その際、民間事業者、あるいはNPO法人が運営者となり、魅力的なコンテンツやプログラムを安価に提供できる仕組みを作る。こうして民間需要の活性化にもつなげるのです
第一章 学校を「ハコモノ」と考えて教育格差解消
・教員が本来、担うべき業務に専念するためには、こうした行政の取り組みだけでなく、地域社会や保護者、そして学校、さらに民間事業者のそれぞれが役割を担うような仕組みが必要です。そのためには、教員という存在を美化せず、業務すなわち「教育技術」に専念してもらうことが何より重要です
第二章 地域を活性化する「ハコモノ」それが学校
・学校を利用できるメリットは、びっくりするほど数多くあります。そこには広々とした校庭や体育館、それにプールもあります。さらに特別な専用室、すなわち保健室、美術室、調理室、理科室、音楽室まで備えている場所は、日本広しといえども、学校をおいて他にありません。
学校は365日、常に存在しています。しかし実は、一年のうち170日が休みなのです
・学校を教員と子供だけの場所に限定するのは、あまりにもったいないといえましょう。もっと学校施設に資本を投下し、市民が使える場所に変えるべきです。
さらにいえば、街づくりの拠点は、駅周辺の施設だけではありません。もっと身近で、人を選ばないコミュニティの拠点となりうるのが、学校という「ハコモノ」なのです
・学校という「ハコモノ」を活用すると、地域は大きく変身します。というのも、学校がある地域には、すなわち多くの人々が住んでいるからです。
住民が誰でも自宅から気軽に足を運べる場所、住民が過ごす設備のある場所、これが学校という「ハコモノ」なのです
・ドイツのコミュニティクラブの事例
三つか四つの学校の、ほぼ中心地点に、体育館やプールを設けます。そして、サッカーや水泳などのアクティビティを行うのです。・・・周辺の学校群が連携し、一つの充実した施設を造っているのです。
ここで生徒たちは他行との練習試合を行うことができるのですが、さらに、その施設では、地域の人たちの交流も実現しているのです。その交流イベントには、生徒たちも、積極的に参加しています
第三章 「地域交流デパートメント」とは何か
・「地域交流デパートメント」では、廃校となった学校を利用するという発想はありません。既存の生きている学校という「ハコモノ」を使うのです。なぜなら、そこは昼間、子どもたちが通う場所であり、周辺には数多くの人が住む、いわば街の中心地域だからです
・全国の自治体は街の活性化に頭を悩ませてはいますが、たくさんの「ハコモノ」、すなわち図書館、美術館、児童館、体育館などを造って事足れりとしています。しかし、その「ハコモノ」群は市内に分散しており、子どもや高齢者が日常的に通うことは難しい状況にあります。
・・・学校という「ハコモノ」は、地域の中心部に、でーんと鎮座しているのです。ここを活用して、多くの世代がふれあい、地域を活性化させるべきでしょう
・学校を放課後や休日に有効活用することは、実は難しいことではありません。
(学校教育法 第137条)
学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる
(社会教育法 第44条(学校施設の利用))
学校(国立学校又は公立学校をいう。)の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努めなければならない
(スポーツ基本法 第13条(学校施設の利用)※要約)
国立学校及び公立学校の設置者は、その設置する学校の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならない
にもかかわらず、学校施設の有効利用が実現できない原因としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
①学校側が教師だけで対応するしかないと考えている
②行政側も暗闘者を出すことができないと考えている
③学校教育を「聖域」と捉えて、民間事業者は参入すべきでないと考えている
・通常、児童館は、その施設は狭いもので、校庭ならぬ館庭もありません。これではスポーツ活動も困難ですが、一方の学校には、広々とした校庭、体育館、音楽室、図工室など、充実した機能が備わっています。
ところが学校施設は、そこが無人のときでも使用できません
・「地域交流デパートメント」を実現するにしても、学校内に新しい施設を造る際に留意しなければならないことは、安全性です。
「地域交流デパートメント」を行う学校には、関係者以外の人たちも来訪します。しかし安全面では、ここで逆転の発想が必要になります。すなわち、「多くの大人の利用者が見守るからこそ、そこが安全な場所になる」という考え方です
・むしろ学校を開放し、多種多様な大人たちが共同利用しながら、いざというときに子どもたちの安全を守るのです。そう、地域住民の見守りこそが、子どもたちの命を守ることになるのです
第四章 民間事業者を活用した「未来の学校」
・筆者は「学校開放=学校貸し出し」という図式をなくしたいと思います。以下に、地域住民が学校を共同利用するかたちを規定します。
①学校教育専用施設:職員室、児童の教室、実習室など ※施設の内容に関しては学校や教育委員会で検討
②地域共同利用施設:学習室、会議室、音楽室、工作室、家庭科室、図書室、体育館、ランチルーム、求職調理室、芝生の工程など ※学校教育の授業カリキュラムを優先
③併設施設:学童保育、児童館 ※「地域交流デパートメント」が役所から運営を受託
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