比企起業塾での教えとミニ起業家という生き方
本書が提示するカンパニー・オブ・ワンは、私が学んだ比企起業塾での教えと共通する点が非常に多く、しかも従業員を雇わない一人経営者としての実践的な内容でした。
比企起業塾での教えとは、まず大きくはランチェスター戦略です。
特に『小さな会社の稼ぐ技術』をテキストとして、「弱者の戦略」の4つのポイントを学びました。
4つのポイントとは、
①一転集中
②小さな1位
③差別化
④接近戦
です。
またこのほか、比企起業塾が掲げるミニ起業家が目指す方向としては、
・小さくはじめて、大きくせずに、長く続ける
・約束を守る(お客さんやパートナーとの信頼関係が大切)
・他者も応援する
といったことがあります。
本書の中ではこれらと共通する内容が多く、深い理解が得られましたが、その中でも特に印象深かったのは、次のような部分でした。
自分にとっての成功を定義し、それを実現するのは自分の責任である
自分の仕事と役割を、自分の暮らしに最適のかたちにすることに関心を向ける
これはミニ起業家という特性によるものかもしれません。
どういうことかというと、「自分にとっての成功を定義し、それを実現するのは自分の責任である」とは、「何が成功かを決めるのは自分」だということです。
つまり、人生における主体性は自分にあるということを改めて確認する作業です。
自分にとって一番大切なことは何かを考えることで、「もっと大きくなる」以外の価値を自分の中につくることができます。
それが自分自身の幸せにつながるのではないかと思います。
もう一つの「自分の仕事と役割を、自分の暮らしに最適のかたちにすることに関心を向ける」に関しては、ミニ起業家は「仕事」と「暮らし」が非常に密接に関わっているため、そのバランスを最適にすることが自分にとっての幸せにつながるだろうということです。
「仕事」だけの成功、特に経済的な利益だけが成功ではないなということ。
これらを意識することで、長く楽しく豊かな仕事ができる、そしてそれが豊かな人生につながるのではないかと思いました。
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以下は本書のまとメモです。
気になる部分を抜粋した読書メモとなります。
「⇒」は私個人の考えをメモしたものです。
まとメモ
・規模を小さくすること、それはものを捨てることだけを意味するのではない。思考を明晰にすることでもある
・会社を大きくすることは必ずしもいいことではない。大きくすることで弾力性と自由が失われることがある
・会社を小さいままにしておくのは、ほかの目的のための手段でもなければ、失敗の結果でもない。小さいままにしておくことそれ自体が目的であり、賢明な長期戦略でもありうるのだ。カンパニー・オブ・ワンは、規模の拡大についてまわるマイナス面を背負いこむことがない。収入、楽しさ、熱心なファン、目的意識、自由、経験は増やしつつも、社員数、費用、ストレスをむやみに大きくしようとする衝動には抗う。このアプローチによって、会社は変化の激しい市場で利益の余裕を確保でき、個人としても困難なときにうまくやっていけるだけの余裕を確保できる
・小さくはじめる。成長を定義する。学びつづける
第1章 カンパニー・オブ・ワンとは何か
・規模の拡大に疑問を投げかけるビジネス。それがカンパニー・オブ・ワンである
・自分の利益と仕事を守れるのは自分だけだ。ほかの人は、あなたの仕事を守ってはくれない。大企業で働いていても、自分にとっての成功を定義し、それを実現するのは自分の責任である
・自分の仕事と役割を、自分の暮らしに最適のかたちにすることに関心を向ける
・すべてのカンパニー・オブ・ワンに共通する4つの特徴
①弾力性
・現実を受け入れる。物事はこうあるべきだという考え方は持たない
・目的意識を持っている
・変化への適応力がある。変化が起こるのは避けらない
②自由とコントロール
・能力と自由は切り離すことができない
・普通の会社員はたいていひとつのスキルに特化できるが、カンパニー・オブ・ワンは、たとえ大企業のなかで活動する場合でも、多くのことに通じたゼネラリストでなければならない
⇒ 公務員はカンパニー・オブ・ワン向きか?
③スピード
・スピードを有利に使えるのは、必要な時に迅速に軌道修正できるからだけではない。邪魔になる人の数が少ないからでもある
④シンプルさ
・カンパニー・オブ・ワンにとって成長とは、ルールとプロセスを単純化することでもある
・いま、安く、すぐにできるところまで規模を小さくしてビジネスをはじめ、それを繰り返せばいい
第2章 小さいからできること
・企業は既存の顧客のことをあまりに蔑ろにしがちである。すでに聴き、買い、利用している人たちだ。これらの人たちが、企業にとっての最重要人物である。新しく獲得しようとする人よりもはるかに重要だ
・自分が経営する会社が世界で競争力を確保できる規模を割り出し、そこで拡大をやめて、大きくすることからよりよくすることへと重点を移す
第3章 リーダーに求められるもの
・ゼネラリストとして望ましいのは、まず専門性を高め、必要に応じて補助的、補完的なスキルを追加していき、最終的に仕事の特定の部分だけでなく全体あるいはほぼ全体を理解することだ
・カンパニー・オブ・ワンのリーダーが出発点とすべき、あるいはすすんで育むべき一般的な性質
・心理を理解する
・コミュニケーション
・弾力性
・焦点を絞る
・決断力
・目的に合わないものにノーと言うことで、目的にかなった貴重なチャンスにイエスと言える余地を確保できる
・すべてを自分でやろうとしたり、何もかもをひとりで処理しようとしたりすべきではない。・・・自分ひとりで働いていると考える必要もない
第4章 「規模拡大」ではない「成長」
・購読者数を増やそうとするよりも、購読をやめる人の数を減らすほうが、多くの利益を確保できる
・拡大に集中せずに規模を小さくとどめておけば、ビジネスの核にあなた自身の誠実さと個性を保つことができる。そうすれば、自分にふさわしく、顧客に役に立つかたちで、ビジネスやチームを運営しやすくなる
・いますぐにはじめられる規模にアイデアを縮小するということ、それはすなわち、手元にあるものを使い、自分の能力が及ぶ範囲でできることをして、すぐに人の手助けをするのに集中するということだ
・規模の拡大を目標にしなければ、ビジネスとビジネスのアイデアを丸裸にしてその本質を見きわめ、いちばんの強みを発見できる
・基本的に、一つひとつのプロジェクトで、それに最も適した者が意思決定を行う
⇒ 経営者がすべて意思決定を行う必要はない
そのための人選が経営者の役割
第5章 なんのためのビジネスか
・カンパニー・オブ・ワンとして成功するには、ビジネスの根本にほんとうの目的がなければならない。どうしてそのビジネスをするのか、それが重要なのだ。目には見えないその目的が、つねにビジネスを動かす。目的は・・・あなたの会社がどう行動し、どう自社を表現するのかを決めるものだ。そしてそれは、ときに利益よりも優先される
・目的は、大きなものから小さなものまでビジネス上の意思決定をすべてフィルターにかける。だれと仕事をするのか、何を提供するのか、時間とエネルギーをどこに集中させるのか、顧客はだれなのかを考える際の軸になる
第6章 「個性」を隠さず顧客と結びつく
・個性、つまりほんものの自分は、従来のビジネスでは「プロ意識」の名のもとに押さえつけられてきた。しかし、カンパニー・オブ・ワンにとっては、これが競争における強みになる。しかも、スキルや専門性は再現できるが、あなたの個性やスタイルをほかの人が再現するのはほぼ不可能だ
・人を魅了できるのは、あたなをおもしろくユニークにしているもの、ほかとはちがう変わった存在にしているもの取り出し、それを伝えたときだ
・立場を決めることは重要だ。そうすることで、あなたと同類の人、集団、顧客の目にとまるようになるからだ。あなたが自分の考えを旗のように高く掲げていれば、人はそれを見つけて集まってくる
・最近では、消費者は自分の価値観にもとづいてものを買ったり選択したりすることが多い。無限の成長に集中することなく、”もっと”が”よりよい”ではないと考えるカンパニー・オブ・ワンは、商品を小さく具体的な集団の価値観にうまく合わせて、そうした集団のニーズや視点に直接訴えるマーケティングを展開できる
第7章 一人ひとりの顧客がすべて
・会社が小さいと、忠実な常連の顧客と人間同士の関係を築くことができ、この個人的な関係があることで、顧客は満足してずっと忠実でいてくれるのだ
・顧客の満足が新しいマーケティングなのだ。あなたに大事にされていると感じれば、顧客はとどまって、ほかの人にもあなたのことを話す
・約束を破るたびに、ひとりの人あひとつの会社を失望させるだけでなく、その人や会社とつながりのあるあらゆる人や会社と仕事をするチャンスを失う
⇒ 「約束を守る」ことの重要性
第9章 知っていることはすべて教える
・ほかから抜きん出て顧客を獲得するには、競争相手よりも規模を大きくするのではなく、競争相手よりもたくさん教えてたくさん共有しなければならない
・アイデアを共有しないで守ることに時間とエネルギーを費やしていると、ほかの人から批判的なフィードバックをもらってアイデアに磨きをかけることができなくなるおそれがある
・カンパニー・オブ・ワンにとって、教えることほど信頼と専門性を築くものはない
第10章 信頼のための戦略
・規模がどれだけ小さくても、顧客の信頼に値するビジネスを維持することで市場で差別化され、ほかから際立った存在になれるのだ
第11章 小さくはじめて繰り返す
・できるだけ早く発売し、核になる商品だけに集中して、出費や経費を減らし、まずあなたのビジネス・モデルを小さな規模で機能させるのが重要だ
・小さな規模ではじめることで、カンパニー・オブ・ワンは、いま目の前にいる人たちの問題を解決するのに全力を尽くせる
第12章 人間関係の目に見えない価値
・社会関係資本がうまく機能するのは、それが相互性を育むからだ。たくさん共有し、ほんとうに価値あるものと手助けを提供して、ほかの人とつながればつながるほど、その人はあなたのことを手助けしたくなる