「おてつたび」の魅力と可能性

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第5回の講師は、株式会社おてつたび代表取締役の永岡里菜さん。
永岡さんのお話を聴くのは2回目でしたが、「おてつたび」はさらなる広がりを見せているようです。
控えめにいって、私にとっては第2回の谷中さんに続いて「神回」となりました。

第5回の講座を受けた学び、気づいたことなどをメモしましたので公開します。
また、「おてつたび」の座組は非常に魅力的で、これを基にしたアイデアも湧いてきましたので書き留めておくことにします。

「⇒」は個人的な考えをメモしたもの。

「おてつたび」とは?

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第5回資料

・「お手伝い(仕事)」×「旅」
 → マイナスイメージのあるような「出稼ぎ」「季節労働」という言葉をリブランディング

・知られていない地域が多い(埋もれてしまう、情報発信できていない)
 → 知られていない地域に行った方がおもしろい

・知られていない地域でも人手不足という問題は共有
 → 知られていない地域に、人が訪れるきっかけづくり、仕掛けづくり
 → 「お手伝い」という目的をつくる

・人手不足は、人と人が出会うことで解決できる
 → それだけでなく地域に人が訪れるきっかけになる
 → 人手不足をチャンスに

・お手伝い=共同作業を通じて、地域の人と交流を図れる
 ⇒ 個人的な体験に基づく、地域との具体的な関係が築かれる

「おてつたび」の仕組み

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第5回資料

・人手不足以外の地域の課題
 ①知られていない地域ほど公共交通が整っていない(交通費が高い)
 ②知られていない地域ほどインターネットで情報を得られない(遊び方がわからない)
 → 心理面でのハードルとなっている

・お手伝い(仕事)で、訪れるきっかけ+交通費をつくる

・地域には、常時雇用するまではいかないけど、繁忙期などスポット的に人手が必要な場面が多い(特に一次産業や観光業)
 → 地域内で募集すると、時給が高くても集まりづらい(きつい、安定しない)
 → 「おてつたび」を通じて地域外で募集すると、3倍以上の応募も
 → 地域にとって当たり前でも、地域外の若者にとっては魅力

・事例
 農業(草刈り、収穫、定植、梱包)、宿泊、酒造、キャンプ場、神社、お祭り、雪かきなど

・損保ジャパンと共同で、おてつたび専用保険も開発

・おてつたびの管理画面は、地域の事業者が自分で記入(スタッフのサポートあり)

・登録や掲載料は無料で、成果報酬制(マッチング成立した場合、事業者側から手数料)

・訪問者のメリット
  ・普段行かないような地域に行くきっかけ
  ・普段知り合わないような人と出会える
  ⇒ 越境体験

・受け入れ事業者側のメリット
  ・仕事が捗る
  ・若い人と賑やかに楽しく仕事ができる
  ・スタッフの張り合いが出る(毎年の楽しみ)

新型コロナ前後での変化

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第5回資料

・全く知らなかった地域に行く人の割合が約6割
 ⇒ 意図しない地域との関わり=新鮮な体験、越境

・訪問者は20代、30代が多いが、60~70代の参加者も(18歳以上で可)

・コロナ禍で技能実習生が来られなくなった課題を、安全・安心に人手不足を解消する仕組み
 → 受け入れ側の希望があればPCR検査受けられる

・一次産業と観光業での、業界を超えた人材シェアリング「おてつたび+」
 → 観光業の人が農業の手伝い、飲食店の人が農業の手伝い
 → 休業期間という時間を自分の糧に変えたい

・コロナ前は大学生が7割
 → コロナ後は社会人の利用が急増し、約半数に
 → 地方への関心、地方に転職したい、会社が地域事業を立ち上げる際の一次情報収集

「おてつたび」立ち上げまでの経緯

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第5回資料

・小さく小さく小さく初めて、何度も何度も仮説検証

・ひたすら地域を巡って一次情報収集

・会社辞めて半年後からテストマーケティング
 → アンケート、ユーザーヒアリング

・アイデアを話すと、みんな「アホじゃないか」
 → 誰も正しいかどうかわからない

・大切にしていたこと
①一次情報を積極的に取りに行く
②地域の方との信頼関係構築
 → 無理強いしない
   何度も通って信頼関係を築く。「永岡さんがやってくれるなら」と言ってくれるまで
③誰の、何の課題を解決するのかを明確にする
 → 「あったらいいもの(nice to have)」ではなく、「なくてはならないもの(must have)」をつくる
④自分の目指す世界を圧倒的に信じる
 → 自分が信じていないもの、自分が楽しんでいないものはシンドイ

個人のメモ

・「おてつたび」のローカルバージョン、比較的狭い範囲での展開もありえそう。地域インターンとの掛け合わせ。マイクロツーリズム要素。
 → 地域の高校生、大学生が、地域の仕事を手伝う

・単なるアルバイトではなく、人との関係構築を意識した「おてつだい」の視点

・季節的な人手不足の組み合わせで、通年での雇用を創出
 → 海士町の複業協同組合の事例

農林水産省主催「農村プロデューサー養成講座(入門コース)」

「農村プロデューサー」とは、地域への愛着と共感を持ち、地域住民への想いを汲み取りながら、地域の将来像やそこで暮らす人々の実現に向けてサポートする人材のことです。(農林水産省HPより)

養成講座には、入門コースと実践コースがあり、入門コースは誰でもオンラインで受講することができます。

 ※農村プロデューサー養成講座に関する詳細はこちら(農林水産省HPへ)

初回~第4回に続き、入門コースの第5回を受講しました。

入門コース全6回のプログラム

気になる各回の講師陣は以下のとおり。

  • 第1回(総論分野) 小田切徳美さん(明治大学農学部教授) 
     → 第1回の内容をまとめた記事はこちら
  • 第2回(イノベーション分野) 谷中修吾さん(一般社団法人INSPIRE代表理事/BBT大学教授) 
     → 第2回の内容をまとめた記事はこちら
  • 第3回(行政分野) 澤畑佳夫(地方考夢員©研究所所長)
     → 第3回の内容をまとめた記事はこちら
  • 第4回(民間分野) 河村玲さん(株式会社良品計画ソーシャルグッド事業部 スペースグッド担当部長)
     → 第4回の内容をまとめた記事はこちら
  • 第5回(都市農村交流分野) 永岡里菜さん(株式会社おてつたび代表取締役)
     → 今回はココ
  • 第6回(地域実践分野) 多田朋孔さん(特定非営利活動法人 地域おこし事務局長)