『場づくりの教科書』
今回ご紹介する本は、長田英史さんの『場づくりの教科書』です。
私は今、個人事業主と一般社団法人ときがわ社中という2つの事業を持っていますが、将来的には自分の「場」を持ちたいと考えています。
ただそれがソフトとしての「場」なのか、空間的なハードとしての「場」なのかということをずっと考えています。
そもそもなぜ自分の「場」が欲しいかというと、比企起業大学や本屋ときがわ町で利用しているときがわ町起業支援施設iofficeのイメージがあったからです。
そこに行けば誰かに会える、何か面白いことが起こりそうな場所。
あるいはそういう場所に集まってくる人たちのコミュニティ。
それがすごく居心地のいいものに思われるからです。
ソフトとしての「場」はコミュニティ、ハードとしての「場」は場所といった方がいいかもしれません。
ただこれらは両方とも「場」といっていいものなのか、そもそも「場」とはなんだろうというのが疑問でした。
そんなときにSNSで本書『場づくりの教科書』が紹介されていたのを見かけ、読んでみることにしました。
「場」は単なる場所・建物のことではない
この記事では、本書の中で特に気になった以下の3点について述べていくことにします。
①場は自分でつくることができる
②場所と場の違い
③私が場をつくり、場が私をつくる
①場は自分でつくることができる
まず大前提になるのは、場というものは「自分でつくることができる」という点です。
読んで字のごとくなのですが、もう少しかみ砕いていうと「自分にとって必要な場は、自分でつくり出すことができる 」ということです。
先日ご紹介した本『成功する起業家は「居場所」を選ぶ』では、起業するために必要な環境を自分で選ぶということがあったかと思いますが、それをさらに進めると「自分に必要な環境は自分でつくる」ということが言えるのではないかと思います。
学校や会社では、場合によっては自分に合わず、個性が埋もれてしまいがちな環境があるのであれば、既存のものから選択して環境を変えるというだけでなく、自分にあった環境や場を自分でつくるという発想もあっていいのではないか。
出だしからさっそく重要な視点を得ることができました。
②場所と場の違い
次は「場所」と「場」という似たような言葉の定義の違いについてです。
先に述べたように、私もそこんところが曖昧でした。
本書には次のようにありました。
場所=地図で示せる点、施設(魅せ、オフィス、会議室、公園)など
場=主に人と人とのつながり方が生み出す雰囲気、可能性
なんとここでは「場」とは建物などの場所とは違い、人と人とのつながり方が生み出す雰囲気や可能性のことだと明記されていたのです。
つまり必ずしも場所にこだわる必要はなく、そこに集まる「人」が重要だということです。
こんなことも書かれていました。
「個のメンバーだからこそ」という雰囲気、そこから生まれる可能性が、場です
思い返してみると、『地域でしごと まちづくり試論』という本を私が書いていたとき、仲間と「ときがわカンパニーとは何か」という議論になったことがありました。
ときがわカンパニーというのは、私の起業のお師匠さまが経営している会社のことです。
「カンパニー」という言葉には仲間という意味もあるので、そこに集まってくる仲間のことも指しているのではないかという話になりました。
しかもそういう仲間が集まってくることによって、なんかしそうな雰囲気があるとか、あるいはそういう「思想」のことでもあるんじゃないかという話にもなったのです。
それこそがまさにここでいう「このメンバーだからこそ」という雰囲気、可能性で、ときがわカンパニーというのはそういう「場」として機能しているのではないかと思いました。
ちなみに仲間の起業家と私が経営している一般社団法人ときがわ社中でも、あるお客さまから、「ときがわ社中に相談すればなんかしてくれそうという雰囲気がある」ということをいっていただいたことがありました。
ときがわ社中は私と仲間がゼロからつくった法人ですので、パートナーやお手伝いいただいている仲間やお客さまも含めて、なんかしそうな雰囲気のある「場」に育ちつつあるのかもしれません。
知らず知らずのうちに「場」づくりができていたことが非常に嬉しく、これからも「何かしそうな場」を意識していこうと思った出来事でした。
③ 私が場をつくり、場が私をつくる
三つめは「私が場をつくり、場が私をつくる」ということです。
「私が場をつくる」については「自分が場をつくる」ということと同義でいいかと思いますが、「場が私をつくる」とはどういう意味でしょうか。
自分がつくった場にいろんな人が集まるようになると、その人たちとの関係性によって「場」の特性は変化してきます。
言い換えると、誰がそこに集まるかで必然的に「場」の雰囲気や可能性や個性が形成されてくるのではないかと思います。
そうなるとそうした「場」があることによって、場をつくった自分自身もまた、そこにいる人たちとの関係性によって影響を受けることになります。
また、「場」に集まる人たちにとっても同様のことがいえるかと思います。
つくって終わりではなく、「場」にはそうした相互作用や継続的な変化が起こるという性質があるということです。
このこともこれからの場づくりを考える上で非常に大事にしたい要素だと思いました。
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以上、今回は長田英史さんの『場づくりの教科書』についてご紹介しました。
参考になりますと幸いです。
また、忙しくて本を読む暇がない、ここに書かれていることを何度も読み返したいという方に向けて、音声配信アプリstand.fmのチャンネル「地域でしごとをつくるラボ」でも本書『場づくりの教科書』のご紹介をしています。
よろしければこちらも合わせて活用してみてください。
stand.fm「地域でしごとをつくるラボ」でのご紹介はこちら。
その他、気になる箇所を以下にまとメモを公開しています。
まとメモ
・場は自分でつくることができる
・自分にとって必要な場をつくり出すことができる
・場づくりの最大の魅力は、つくった場を他のだれかと共有できること
・場づくりは、新しく場をつくるだけではありません。いまある場を、よりよいものに変えていくこともできます。あなたがどのような立場でそこにいたとしても、自分の考え・やり方次第で、目の前の場に変化をもたらすことができる
第1章 場はたった一人の思いから生まれる
・場所=地図で示せる点、施設(魅せ、オフィス、会議室、公園)など
場=主に人と人とのつながり方が生み出す雰囲気、可能性
・「個のメンバーだからこそ」という雰囲気、そこから生まれる可能性が、場です
・居場所というのは建物というよりむしろ人間関係
・私が場をつくり場が私をつくる
第4章 会議のやり方
・本当に思ったことが言えないということは、お互いを信頼せず、安心感が持てずに、緊張しているということです。そんな状態で「安心できる場所」とか「ほっとできる場」などと言っていても、絵空事に過ぎません。訪れる人に心地よさや安心感を届けたければ、まず自分たちが心地よく、安心した関係性をつくる必要があります。
第5章 継続的な場をさらに豊かにするには
・いつのまにかどこかよそよそしい、お客さんのような状態になってしまう。こういう現象を「客体化」といいます。
→ 自分が当事者の一員であるにも関わらず、必要な情報を知らせてもらえなかったり、知らないうちに何かを決められてしまったとき(客体化)
・期間限定で場を立ち上げて、その後で期間が来る前に続けるかどうかの判断をすると活動を始めやすくなる
第6章 場づくりはいつも自分の内側から
・場づくりをするということは、いまこの世にないものをつくり出すということです。世の中にはないけれど、自分の内側には思いがある。これが場づくりの必要感です。用意された社会のなかだけでは収まりきらない思いは、その人のはみ出した部分でもあります