林業について学んでいます

ときがわ町の林業・木材活用を盛り上げるため、TOKIGAWA FACTORYというチームで活動しています。

まずは身近にある林業について学んでいこうということで、本書を読んだ記録をメモします。

※本稿は『日本林業はよみがえる』を読んで気づいたこと、感想の記録的な意味合いになります。

疑問・知りたいこと

・ときがわ町の林業残材、工場残材は、何がどれくらい発生しているのか?
 それをどのように処分しているのか?
・ときがわ町の林業、製材工場の取引先(流通構造)はどのような内訳になっているか?
・ときがわ町における小規模所有者情報の集約の現状は?
 集約システム構築の可能性はあるか?
・日本における高温乾燥、低温乾燥のシェアはどのくらいか?

本書のまとメモ

1章 日本林業のチャンス到来

・日本のスギ、ヒノキと競合する針葉樹の外材は、欧州や北米産がほとんど。しかも、スギは輸入丸太の半分程度にまで価格が下落しており、外材との価格差は完全に逆転している。それにもかかわらず、国産材はなかなか使ってもらえないのが実態

・林業は先進国型産業である
 ①森林資源を商品化するには、伐採、搬出、木材マーケティングなどの森づくりから木材生産のプロセス全体にわたる高度なマネジメント、専門知識・経験や技術が要求される
 ②林業は資源立地におのずと競争優位性がある

・日本のみ木材生産量が戦後一貫して低下しているのは、輸入自由化で外材が入ってきたためではなく、戦後、資源を伐り尽くしてしまったから。
 → 過伐によって供給できる資源がなくなってきたから
 → 外材はむしろ、国産材の供給能力の減少を補った

・戦後から高度経済成長期にかけて、住宅や紙パルプ需要が旺盛になり木材価格が高騰し、相対的に低い賃金コストと相まって、伐れば伐るほど儲かる時代が続いた
 → 「林業バブル」

・伐採し尽くした後の針葉樹の植林も行われた(拡大造林)が、造成されたばかりの森林を育てるには、下刈りや蔓きり、伐り捨て間伐などの炎天下の重労働、巨額の経費が必要な保育の段階に突入した
 → 日本の森林の8割近くが未だ林齢50年生以下(出版当時)

2章 持続可能な林業とは何か

・木材の総合利用のカギとなるのが、製材工場からの残材と、隣地残材である。木材産業の代表は製材だが、製材からは端材やおが粉などの大量の工場残材が発生する。また、木材生産の現場でも同様に、株や曲がり材、枝などの隣地残材が発生する。これらを可能な限り有効に利用し、森林資源の付加価値を最大限引き出すことが、林業・木材産業の競争力強化と環境問題への貢献のために不可欠である

・ドイツでは、木材生産に占める製材用材の比率は56%であり、木質ボードや紙パルプなどの低質材利用やエネルギー利用も活発である

・ドイツとは対照的に日本の木材利用では、製材用材が8割を占め、低質材利用が低迷している。日本のように未成熟林分がほとんどを占める段階で木材生産をすれば、本来、低質材が大量に発生するはずである。しかし、日本全体でみると、低質材利用がほとんど進んでいない。
→ 伐採されても搬出する技術がないため、それだけ材が林内に放置されている

4章 世界の森づくり・林業はこうなっている

・世界の森づくりを単純化すると、以下の2つ
 ①数十年単位で植林・収穫を繰り返す短伐期
  → 植林した木をいっせいに伐採する皆伐
    伐採後の更新は植林
 ②そのローテーションが長い長伐期
  → ②-1 皆伐しないで段階的に残った木を収穫して、少しずつ更新する方法
    ②-2 小面積で皆伐し、植林または天然更新する方法

・短伐期・皆伐の典型例はニュージーランド
 30年で1本1~2立方メートル
 30年弱のローテーションで植林・皆伐を繰り返す短伐期・皆伐経営
 収穫方法は大面積皆伐

・ドイツなどの中部ヨーロッパでは長伐期・非皆伐型林業が主流
 林齢100年を超えて標準化
 間伐によって収穫を繰り返し、100年を超えて残った木を少しずつ収穫して、可能な限り天然更新
 森林の多面的機能を引き出すうえでも優れた方法

・フィンランドなどの北欧では80~140年の伐期だが、皆伐

・世界の森づくりの目標は立木1本当たり1~2立方メートルとなり、その材積になるまでの時間が木材生産のローテーション(伐期)になる

・日本ではそもそも成長量を把握し、その一定量を伐採するという考えが希薄だった。これは、日本の人工林資源のほとんどが戦後植林されたもので、まだ利用段階にはなかったためである。戦後の拡大造林開始から50年を経て、今後は資源の本格的な利用段階に入る。今こそ成長量から割り出した木材生産量を実現する体制へ整備をすべき時に来ている

5章 日本にふさわしい森づくり

・日本が戦後考えだした森づくりは、植林して40~50年で皆伐して収穫を繰り返す、短伐期・皆伐林業だったが、これを支えた条件は根底から覆り、大幅な見直しを迫られている。最大の問題は皆伐しても再造林する経費を賄うことができず、林業が成立しないということである

・日本の皆伐における収穫量はヘクタール当たり300立方メートル程度。立法単価1万円として、売上で300万円。木材生産・販売経費を150万円と低めに見積もったとしても、所有者の手取り収入は150万円にとどまる
 → 皆伐後は、地拵え、植林、下刈り、劣性木を間引く間伐などの炎天下の重労働が続き、木を育てるまでに250万円以上かかる
 → 木材販売による収入では造林経費すらカバーできない

・そもそも短伐期施業は、木材需給の逼迫を背景に、材価が極めて高い反面、労賃が低かった戦後まもない時代に考え出されてものである。20~30年生の径の細い間伐材でも多様な用途があったことや、最終利用形態が12センチ角の柱だったことから、十分な合理性があった

・短伐期施業に代わるこれからの森づくりは、間伐によって収穫を繰り返していく、長伐期施業である
 → 間伐による収穫材積は、面積当たりで皆伐の3割くらい。間伐によって日光が入れば木の成長が進み、蓄積は早く回復し、10年後にはまた間伐によって蓄積の3割前後を収穫できる。最終的には80~140年くらいで世代交代をはかる施業方式

・収穫量に関して林業経営上意味があるのは、1本からどれだけ商品として販売できる材積が取れるかという歩留まりである(=丸太材積)
 → 木は太くなればなるほど通直となり、丸太にして販売できる部分が多くなる

・長伐期化は、木を太くして利用することであり、木材の利用範囲は大幅に広がることになる
 → 短伐期・皆伐から生産される材は一定の太さ以下のものにならざるを得ず、芯を中心に柱用に製材するいわゆる芯持ち材を中心とした利用しかできない
 → 大径化してけば、芯を外した利用が可能となるため乾燥はずっと容易になり、品質も安定することから、利用可能性は大幅に広がる

6章 林業経営を支えるシステムの構築

・部分的にはともかく、面的には、森林組合以外に所有者に代わる森林管理の担い手としての機能を担いうる組織は存在しない。したがって、林業のシステムを健全化しようとすれば、森林組合が本来の役割を果たすように改革することこそが、林業再生の第一歩となる

・森林組合が組合員以外の事業を行うことを厳しく制限し、組合の業務を森林所有者に対するコンサルティングに特化させる。これによって森林管理と現場作業とを明確に分離できれば、現場の作業は民間事業体に委託することになり、森林組合と民間との役割分担は明確になって、相互連携は自ずと進む

7章 待ったなし 森林組合の再生

・当初、日吉町森林組合は伐り捨て主体で、道の両側の無理ない範囲の木材を搬出することから始めたが、繰り返していくうちに技術力も向上し、それに合わせて機械を買い増すというやり方で、伐り捨て中心から利用間伐への無理なく移行することができた

・販売先をみると、原木市場への依存は全体の2割くらいで、それ以外は、合板工場やチップ工場と長期的な契約を結び、直接取引をしている。同組合は、地域森林を一体的に管理しており、年間の事業量が決まっている。このため、どのような材がどのくらい出てくるかがわかるから、それをベースに直接需要先と価格交渉を行い、通常より高い価格での木材販売に成功している

・日本では、需要と供給をマッチングさせるコーディネーター育成の必要性が指摘されているが、そもそも山側の生きた情報が整備されてはじめて需要と供給をダイレクトに結びつけることができる。山側である林業のシステムが不在で、木材生産の情報も分散している状況では活動の余地は限られる

・これからの日本の丸太のサプライチェーンのあり方を考える場合、小規模所有者を集約するところに自ずと情報が集まる。つまりそこに、ビジネスチャンスが生まれるということである

9章 「保育から利用」への転換を実現する予算

・戦後植林した資源を将来につなげるには、森林所有者に働きかけを行い、施業の集約化を行ったうえで、路網整備と間伐を一体的に進めることが不可欠である

・日本の森林を適切に維持管理し続けるためには、間伐した木を販売して収益を上げる体制を整備することが不可欠の前提となる。そのうえで、より森林の多面的機能を引き出す林業技術の高度化を図ることこそ、先進国での林業といえる

・経済か環境かの二者択一ではなく、両者は不可分であり、経済成長によって環境の機能も高めるというのが、これからの経済社会システムのあり方

10章 欧州の木材産業は今

・木材産業の基本は、建築用構造材などの内装材をつくる製材である。製材用材としての利用が丸太の付加価値をもっとも多く引き出せ、その分、材価を高くすることができる。
 また、製材工場からは大量の工場残材が、木材生産の現場からは根元の曲がりや木の先など大量の低質材や隣地残材が発生する。このため、世界ではこれら残材を含めた木材の総合的な利用(カスケード利用)を行うことによって、森林資源の有効利用と、林業・木材産業の競争力の向上を図っている

・ドイツでは、現在残っている小規模製材工場は、規模の特性を発揮したものがほとんどである
 ①注文製剤
 ②特殊製剤
 ③ニッチ需要

・ドイツの小規模製材工場による木製サッシの事例
 ドイツでは、
 ①住宅の規格化が米国ほど進んでいないので工務店ではサッシなどの建材もオーダーメードを使う場合がある
 ②古い住宅が多いためリフォーム需要が多く、これに対しては規格品で対応することができない

 ⇒ 日本の地域の古民家のリフォームやリノベーションにおいては、特注品の需要があるのでは?

・木製サッシの小規模工場が成立するためには、その関連産業もその規模に合致している必要がある。製材品やガラスなどの部品供給をするところが大型工場しかなく、そうした工場から部品をオーダーメードで調達しようとすれば大幅なコスト高となってしまう

・小規模同士の商圏は、基本的に地域密着であり、いわゆる地産地消型である。小規模の工場は、それが製材であれ、ガラスであれ、製造コストそのものは大規模系にかなわないかもしれないが、地域密着であれば輸送経費を大幅に削減できるし、口コミや地域の実績で信用力が定着すれば、営業経費もほとんどかからなくなる。また、規模の特性を活かした製品とサービスを提供することによって、量産品とは異なる存在意義、独自性を発揮することができる

⇒ ネットワーク化することで地域全体の独自性を生み出せる
  特注品が地域では標準化する
  ネットワーク内は割安に、地域外に対して高単価で勝負できる
⇒ 『利益3倍化を実現する 「儲かる特別ビジネス」のやり方』

出典『日本林業はよみがえる』

11章 日本の木材産業の構造転換

・国産材は、工務店需要が主体でありながら、工務店と直接取引をするわけではなく、製品市場や製材小売りといった複雑な流通ルートに依存している。製材工場の製材品出荷先は、建築業者との直接取引は27%しかなく、半分以上の57%は木材市売市場や木材販売業者との取引となっている。国産材に限れば流通業者との取引割合はより高いものとなる

出典『日本林業はよみがえる』

・日本には丸太を安定的に供給する前提となる小規模所有者を集約するシステムがなく、丸太の精算は単発的で偶然的であるため、製材工場が規模の拡大を図ろうとしても、丸太の調達そのものが限られていた
=日本林業のアキレス腱

・日本では木材乾燥技術が新しい分野ということもあって、その方法も高温乾燥から低温乾燥までさまざまである。それぞれどのような特徴があり、どのような場合に使うのか、どの程度尾含水率とするのがいいのかも定まっておらず、それぞれの製材工場は自分に都合の良い方法で乾燥して、それぞれが自分の製品の良さを宣伝している

⇒ 高温乾燥、低温乾燥のシェアはどれくらいか?

・40~50年で皆伐をして収穫をするという今までの日本林業の考え方は、柱を取ることを前提としたものであり、多様な森づくりも多様な木材利用も困難にしてきた。このような弱齢林利用では、木材の品質に問題が多く、ふんだんに木材を使うことは難しい。
30年程度で壊されるという日本の木造住宅は、今までの森づくりの反映でもある

・皆伐をしないで多様な森づくりをしていくことは、木の文化を復活させる前提でもあるのである

12章 バイオマスエネルギー利用拡大のために

・ペレットを作るためには、木を完走したり、おが粉にしたり、おが粉を固めるなどの機械が必要となるから、薪やチップに比べ加工工程は複雑になり、コストもその分かさむ。
 → ペレットを丸太から加工して作ることはコスト的に合わない
 → ドイツでは、製材工場から発生するおが粉をそのままペレット加工するのが一般的

 ⇒ ときがわ町では製材工場などからどのくらいのおが粉が発生しているか?
   それをどのように処分しているか?

・発電はそのためにまず原料を燃やすわけだから、その熱を同時に利用するいわゆるコージェネにすれば、小型であってもエネルギー効率は大幅に向上する

・丸太を調達してそこからチップやペレットを生産するには、膨大なコストがかかる
 ①林業に対する補助金によって実際のコストよりもはるかに安い価格で丸太を調達できる
 ②設備に対する補助金によって、設備投資の償却が圧縮されるため償却負担が表面化しない
 ③森林組合などでは、補助単価の高い森林整備事業の黒字で工場の赤字を補填して辻褄を合わせている
 → 事業が採算ベースに乗ることは永遠にありえず、補助金がなくなれば事業も終わる

 ⇒ 継続可能な事業システムを構築する必要がある
   お金が外に逃げない、事業の中から次の事業に再投資できるだけの収益を上げられる仕組み

終章 動き出す森林・林業再生プラン

・森林には、木材生産はもちろん、土壌保全、水度保全、水源涵養、生物多様性の保全、炭素固定等々の様々な要請がある。そして森林が一部原生林を除き、人の手を入れなければこうした機能を引き出すことができないとするなら、木材生産こそそのためのもっとも基本的な手段である

・道ができてはじめて現地に行くのが可能となること、森林所有者の森に対する関心を高めることができること、現場での労働衛生・安全のためにも不可欠であることなど、路網は森づくりの原点と言えるものである