まなびしごとLABの風間です。
今回取り上げるのは『地域循環型経営』(島原俊英 著)。
地域での事業を考える上でキーワードになる「循環」という言葉が、「地域」「経営」とともにタイトルになっていたため、完全にタイトル買いでした。
直近で控えている新プロジェクトを考えるヒントもいただきました。
5大エッセンス
まずは本書から最も印象に残った5つのエッセンスを抽出しました。
大手企業の生産拠点で働くということはほかの地域でもでき、優秀な人材にとって特に魅力のある仕事に映らず、宮崎にとどまる理由にならない
→ 大手に頼らない地域に根付いた企業、産業が魅力的な仕事になる
地域資源を見直し、地域力を結集してさまざまな仕事を生み出していこうとするとき、合わせて考えなければらないのが地域循環です。新たな地域産業は地域内の循環サイクルを備えることで、本来の価値を発揮する
地域が必要とするものを地域がもつ力を使って地域内で生産・販売することで地域内の所得を増やし、それを地域内に再投資し循環させて産業の成長と雇用の拡大を実現していく、これによって地域力が不断に高まる正のスパイラルが生まれます
→ 地域の資源や産業が本来の価値を発揮するには、地域内の循環が必要
バケツに入る水が少ないことを問題にするのではなくそもそも水が出て行ってしまうことを問うべきなのです。・・・地域経済を取り戻すためにはいったん地域に入ったお金を滞留・循環させることで地域の所得を上げていかなければなりません。域外のものを安く購入することを考える前に、域内で付加価値をつける発想が必要
→ 単なる経費削減ではなく、同じ調達コストでも地域内で使えば地域に残るお金を増やすことができる
企業は企業、教育は教育と切り離されている限り、人の地域内循環は生まれず地域力の向上も実現しません。子どもたちが小さいときから地域のことや働くということを考えたり、さらにいえば自分の生き方を考える機会を提供することは重要であり、それができるのは地域の中小企業だと思います
→ 地域の企業が地域と深く関わることで、地域教育の担い手となることができる
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その他、本書で気になった個所をまとメモとして書き留めます。
まとメモ
はじめに
・大手企業の生産拠点で働くということはほかの地域でもでき、優秀な人材にとって特に魅力のある仕事に映らず、宮崎にとどまる理由にならない
・宮崎出身者が戻りたい、在住者が住み続けたい、そして宮崎にルーツがない人でも移住したいと思ってもらえる地域にしていかなければ、地方創生は実現できません。そのためには宮崎の中小企業が魅力的な仕事を創出する必要がある
・「地域循環型経営」とは、地方の衰退を食い止めるために地域のヒト・モノ・カネを活用しながら持続的な拡大再生産のサイクルを回し続ける経営
第1章 染みついた受け身体質・・・新たな価値を生み出せない地方中小企業
・日本の中小企業のうち下請けの割合は全体の47.9%となっており、実に半数近くが下請けです(経済産業省「商工業実態基本調査」)
・親企業からの受注をそつなくこなすだけの下請け企業には研究開発や営業・マーケティングの力を発揮できる人材は育っておらず、自分の目でマーケットを見つめて何が求められているのかを考え、そのニーズをつかんで自らの技術力を活かした製品やサービスを開発するという企業として当たり前のことができいない
・自分の会社だけを見て対策を考えても展望は見えてきません。会社も大事ですが同時に地域全体が豊かにならなければ未来もないからです。会社も地域もほかでは得られない独自の価値を生み出すことで衰退を食い止めて反転させ、新たな発展の道を歩み始めなければならない
第2章 地方資源の活用こそが地方中小企業存続のカギ
・より安価に効率的な生産ができるなら、極点にいえば大手企業はどこにでも行きます。だからこそグローバルな競争力を維持しているともいえ、そうした企業に地域の持続可能な発展のパートナーであることを求めるのはもともと無理があります
・大手企業の誘致は地域経済の生殺与奪の権利を大手企業に渡すことであり、大企業依存の経済構造と下請け慣れして創造力を失った地元企業だけを残すのです
・結局、地方行政は外部の力に頼り、その力を借りることばかり考えているといわざるを得ません。下請け企業が受け身体質を身につけてしまったのと同じように行政も外部依存体質に染まっているのです。この延長上には本当に地域活性化をもたらす施策は出てこないと思われます。結局、地方行政は外部の力を重視するために地元企業の育成や新たな事業発掘に力を注げていないと考えます
・そもそも中央政府が地方をひと括りにして一律の戦略を決定し、それを施策にまとめて予算を付け各地方に下ろすという仕組みそのものに限界がある
・地域資源を見直し、地域力を結集してさまざまな仕事を生み出していこうとするとき、合わせて考えなければらないのが地域循環です。新たな地域産業は地域内の循環サイクルを備えることで、本来の価値を発揮する
・地域が必要とするものを地域がもつ力を使って地域内で生産・販売することで地域内の所得を増やし、それを地域内に再投資し循環させて産業の成長と雇用の拡大を実現していく、これによって地域力が不断に高まる正のスパイラルが生まれます
・こうした地域循環型の経済をつくりあげること、そして地方企業が自らそのサイクルのなかに存在場所を見いだし、その一翼を担うという地域循環型経営を進めていくことこそ地域を強くしていく道だと思います
第3章 地域循環型経営の第一歩 地方中小企業のネットワークを構築する
・地域循環型経済の確立とそのなかで役割を果たす地域循環型経営の実現のためには、まず地域におけるつながりをつくることがポイントです。「親企業ー下請け」、「政府ー地方行政ー地域企業」という縦の関係が主流だったこれまでの地域社会に地域という横串を通し、すべてのステークホルダーが横につながることがまず地域循環型経済の第一歩です
・中小企業が目指すべきゴールは自社の利益拡大ではなく、地域の課題解決による地域の価値向上であり、そのためにどういう価値を地域に提供するのかがメインテーマになります。まず自社の売上ありき、自社のアセット(経営資源)ありきというアプローチでなく、まず地域ありきで考えていかなければならない
・地域が取り組むオープンイノベーションはそうした従来のものとは大きく異なり、目的は商品やサービスの開発効率の向上ではなく地域の課題解決です。そのために必要なのは単なる技術や知財(モノ)を超えた新たな関係性(コト)であり新たな物語です
・地方中小企業の経営者は人の輪の広がりの中心を担うことができます。そこで実感したのは民間の中小企業は人や団体をつなぐ役割を果たしやすい
・中小企業こそ地域再生を願う地元の人々のハブとなって活躍することができる存在
・働くとは何か、ものづくりとは何か、人と力を合わせるとはどういうことか、人に学び教えるとはどういうことか、高め合うにはどういう心構えが必要か・・・こういったことは社会教育、産業教育のなかでしか学べないのです。・・・子どもたちが小さな頃から地域のことを考えたり、働くことの意味や将来の自分の役割や生き方について考える機会を提供するのも地元企業の社会的な責任です
・バケツに入る水が少ないことを問題にするのではなくそもそも水が出て行ってしまうことを問うべきなのです。・・・地域経済を取り戻すためにはいったん地域に入ったお金を滞留・循環させることで地域の所得を上げていかなければなりません。域外のものを安く購入することを考える前に、域内で付加価値をつける発想が必要
・企業は企業、教育は教育と切り離されている限り、人の地域内循環は生まれず地域力の向上も実現しません。子どもたちが小さいときから地域のことや働くということを考えたり、さらにいえば自分の生き方を考える機会を提供することは重要であり、それができるのは地域の中小企業だと思います
第4章 食・環境・エネルギー・・・地域社会全体の課題にビジネスチャンスが埋もれている
・再生可能エネルギーで発電した多くの電力を地域外に売電してしまい、地域内で使われていないという現実もあります。発電量そのものは多くてもそれが外に出て行ってしまっているのです。再生可能エネルギー利用をもっと拡大して自給率を高め、さらにそれを県内で消費するようにしていくことは直接的に県際収支を改善して地域経済を豊かにするだけでなく発電関連事業を育て、新たな雇用を生むことにもつながります
第5章 地域循環型経営を実現すれば、地方企業の存続と真の地方創生につながる
・本来のオープンイノベーションは一企業の利益ではなく地域の発展という社会的な目的のために地域のステークホルダーである市民や企業、大学、行政がコラボレーションし対話しながらつくり上げていくものです。そのためにはそれらのステークホルダーを一つにまとめる今までにない有機的なエコシステムが必要です
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