「ブランディング」と「デザイン」の関係性がわかりやすい!
今回取り上げる本は、「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトを掲げる株式会社エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋さんの『ブランディングデザインの教科書』。
非常にシンプルな文章とイラストが特徴で、「ブランディング」と「デザイン」の関係性が非常にすっきりと理解することができます。
これまで「ブランディング」とか「デザイン」というと、どうしても意匠の方に目が向いてしまっていましたが、「ブランディングデザインとは経営のデザイン」であるという視点は非常に大きな学びになりました。
ブランディングとは何か
そもそもブランディングとは何かという問題です。
西澤さんは、ブランディングとは「差異化」であり、「伝言ゲーム」としてとらえることができると述べています。
伝言ゲームにおいては、「わかりやすさ」とか「伝わりやすさ」が重要になります。
極端にいえば、伝言ゲームを有利に進めるためには、伝言しようとする言葉が一つだけで、短ければ短いほどいいわけです。
そのため、経営に置き換えてみた時、経営戦略をシンプルなわかりやすい言葉で表現できることが他との差異化につながり、経営を強くすると考えることができるというわけです。
ブランディングを考えるとき「何でもできる」「あれもこれも」は価値がない。プロジェクトをたった一点にフォーカスしていくのがブランディングの最大のコツです。
と述べられているように、ランチェスター戦略でいう「一つに絞る」ということや、「やらないことを決める」というのも、ブランディングにつながっていたんですね。
そしてそのようにして描いた経営戦略やコンセプトをもとに、企業活動のすべてを一本化して統合して具現化していくのがデザインというわけです。
デザインというとカッコよくて憧れがありますが、これまではどこか縁遠いように感じていました。
でも本書を読んで、デザインをすごく身近にとらえることができ、自分にもできるデザインのやり方(たとえば「言葉」など)もあるのではないかと感じました。
本当の「強み」とは何か
もう一つ大きな学びとなったのは、本当の「強み」とは何かということです。
西澤さんは、次のように述べています。
本当の強みは、「自分たちの良いところ」かつ「他社とは違うところ」にあります。
当たり前のことですが、誰でもできるのであればそれは「強み」とはいえません。
だから、「強み」というと、何か誰にもマネできないすごいスキルやノウハウでなければならないと勝手に自分の中でハードルを上げていたような気がします。
でも、必ずしもそうではないということを教えられました。
誰よりも優れている必要はない。
自分の良いところが、他者(社)と「違って」いることが重要なんだと。
つまりは「差異化」の問題です。
いかにその「違い」が自分が相手にしようとするお客様に認識されるかが重要であり、その差異化こそがブランディングの目的なのです。
SMAPさんの「世界に一つだけの花」ではないですが、オンリーワンの存在であるということ。
もちろんそれがナンバーワンであれば最も分かりやすいわけで、自分がナンバーワンになれる分野をうまく切り取るということも一つの方法でしょう。
ランチェスター戦略でいう「小さなナンバーワン」を獲得することはこれにあたります。
本書を通じてブランディングやデザインに親近感を持つことができました。
すばらしく分かりやすくこれらについて学べる一冊です。
本書で得たブランディング、デザインの視点はぜひ経営に取り入れていきたいですね。
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以下は、本書の気になる箇所のまとメモです。
「⇒」は個人的な意見、感想を示します。
まとメモ
1時間目 ブランディングとは何か?
・ブランディング=差異化
・ブランディングデザインとは、ブランド全体をデザインし、他者と差異化すること
・マーケティング ≒ 売るゲーム
ブランディング ≒ 伝言ゲーム
・今は「信用できる誰かがすすめる=信頼性が高い」というように、情報の信用根拠を、対象そのものではなく利害関係のない第三者に求めはじめている。・・・インターネットの普及と共に「伝言」された情報にこそ、大きな信用価値が発生しはじめているのです。
・他と差異化されていて、かつ伝言ゲームするようなブランディングの3条件
①トップの熱い思い
②良いモノ(サービス)
③コミュニケーションチーム
・「つくる」」と「伝える」の両輪体制を自社でしっかり持つことが、ブランディングの差異化要因をきちんと伝言することにつながっていくのです。
2時間目 ブランディングデザインの考え方
・本当のデザインとは、広義のデザイン「か」がディレクション「かた」を通して狭義のデザイン「かたち」へとなめらかにつながる具体化プロセス全体のことをいうのです。
・デザインディレクションで様々なデザインの統合を行い、ブランドとして差異化された「ある一定の方向性をつくり出す」必要がある
・ブランディングデザインの3階層
上から順に「Mマネジメント」「Cコンテンツ」「Cコミュニケーション」
・経営をデザインするということは、すなわち経営戦略の具現化です
・ブランドにおける「か(思考や原理、構想)」とは経営そのものです。
・MCC別にみてなるべく上位階層に差異化要因をつくり出すことが、ブランディングデザインでは定石
・Cコミュニケーションのデザインをしっかり行うと、世の中への伝播のスピードの速さが圧倒的にあがります
・経営の外側から貢献するブランディングデザイナーの1番の大きな仕事は、経営者への新しい視点の提供
3時間目 ブランディングデザインの進め方
・フォーカスRPCD
真ん中に「Fフォーカス」があり、左上の「Rリサーチ」からはじまります。「Pプラン」「Cコンセプト」「Dデザイン」の順で続き、Dまでくるとそこで終わりではなくて、またRへと還っていく。
・フォーカスRPCDで最も重要なもの、それは「フォーカス」です。・・・ブランディングを考えるとき「何でもできる」「あれもこれも」は価値がない。プロジェクトをたった一点にフォーカスしていくのがブランディングの最大のコツです。
⇒ ランチェスター戦略の「一点突破」
・フォーカスは伝言ゲームを速くする
・フォーカスしようとすると「やることを決める」のはもちろんとても大切です。ですが、実は同じくらい重要なのが「やらないことを決める」ことです。そしてこちらの方が、はるかに難しい。
・共創とは一緒に考え、一緒に悩み、一緒に決めるデザインプロセスなのです。
・本当の強みは、「自分たちの良いところ」かつ「他社とは違うところ」にあります。
・クリティカル・コアとは・・・ブランドにある複数の強みの模倣困難性をさらに高めるような1つの施策アイデアのことです。
・ブランドコンセプトは「ブランドで1番大事な考え」=判断基準
・伝言ゲームを速くするネーミングの5つのポイント
①ブランドコンセプトを表現しているか
②オリジナリティーがあり、市場で差異化されているか
③印象的で発音しやすく、覚えやすいか
④商標登録ができるか
⑤気に入っているか
・ブランディングを行う上で、なぜデザインが必要か?
→ 「お客様が1番最初に触れるのはデザイン」だから
・ブランディングのためのデザインとは何かというと「ブランドコンセプトの具現化」なのです。ブランドの考えをデザインで表現すること、これに尽きるのです。
・伝言ゲームにおいてデザインが最強なのは、「見ればわかる」コミュニケーションだからです。
・言葉が意味を正確に伝える「理解の表現」なのに対して、デザインはファジーでより多くの情報を伝える「直感の表現」なのです。だからデザインは言語化された情報より雄弁にブランドを物語ることができます。
・本当のデザインとはそのブランドの「考え」そのもの。つまりブランドコンセプトと結びつくことで、ブランディングで最強のコミュニケーションツールとなり得るのです。
・ブランディングでは「ブランドが変わらないように変化し続ける」ことが求められます。
→ 市場は常に変化し続ける
→ ブラントとして成功するには、成長し続ける市場に対して、自分たちもさらに成長し続ける必要がある
・デザインを経営に役立てようとするとき、まずデザイナーが心がけるべきことがあります。それは「デザインの言語化」です。
・ブランディングデザインの8つのポイント
①差異化できているか
②シンプルであるか
③コンセプチュアルであるか(コンセプトを的確に表現できているか)
④構造化されているか(時間耐力があるか)
⑤テイストがあっているか
⑥メジャー感があるか(正当感、王道感があるか)
⑦ディテールの完成度が高いか
⑧美意識があるか