自分にとって「起業に最適な環境」とは
今回ご紹介する本は馬田隆明さんの『成功する起業家は居場所を選ぶ』という本です。
本の冒頭でも引用されていますが、有名なコンサルタントの大前研一は、自分を変えるには「時間配分」「住む場所」「付き合う人」を変えるという3つの方法があるといいます。
これらを簡単にまとめると、自分を変えるには「環境を変える」ことだと馬田さんは述べています。
つまりこの本がいいたいのは、「起業」という目的があるのなら、その目的に最も適した環境に一歩踏み出してみようということです。
本のタイトルは「居場所を選ぶ」ですが、「居場所」というのは単にハードとしての場所ということではなく、周りにいる人も含めた「環境」のことなんですね。
今回はこの「環境を変える」ということについて考えてみたいと思います。
私が比企起業塾で得た2つのこと
私がこの本をはじめて読んだのは2019年の6月のことです。
私は2020年3月に公務員を退職しましたが、この本を読んだ頃は公務員を退職して起業することをほぼ決めていた時期になります。
そのきっかけは2018年に比企起業塾(現比企起業大学大学院)の第2期に参加したことで、2つのものを得たことが大きかったと思っています。
その2つのものとは何かといいますと「仲間」と「コミュニティ」です。
「仲間」
まず「仲間」というのは比企起業塾の先生をはじめ、起業の先輩方、それから比企起業塾を通じて知り合った方々のことです。
これってまさに「付き合う人」が変わったということだと思います。
私が比企起業塾に参加したのが2018年で、この本を読んだのが2019年なので完全に後づけですが、比企起業塾に参加してまさに付き合う人がガラッと変わりました。
起業塾なので当たり前かもしれませんが、周りにいる人は起業家や起業を目指している人ばかりなんですね。
起業家というのがどういう人たちかというと、自分の仕事とかお客さまとか働く時間を自分で決めている人たちです。
そういう人たちに囲まれていると、自然と自分もそういう考え方になってくるんです。
今も忘れられない先輩起業家の言葉があります。
「起業は大変だけど、この楽しさを知ったら会社員には戻れない」
その言葉を聞いた時、
「ああ、自分もそんな仕事がしてみたい」
「この人たちの近くにいたら自分もそんな仕事ができるんじゃないか」
というふうに思えました。
そんなふうに思ったのは私にとっては初めての経験でした。
また、もう一つ忘れられない経験があります。
私が公務員を辞めて起業するということを宣言したとき、私の先生が1通のメールをくれました。
そしてなんと最初のお客さまになってくれたんです。
本当にありがたいと思いましたし、感動して今も大事にそのときのメールをとってあります。
その方がいつもこんなことを言っています。
「起業しようとする人にとってお客さまになることが一番の応援になる」
まさにその応援が私にとって起業の後押しになりましたし、先生からいただいたこの御恩を、先生にお返しすることはもちろん、これから起業しようとしている後輩の方々にも「恩を贈る」ということをしていきたいなと考えています。
それが先生への何よりの恩返しになるのではないかと思います。
「コミュニティ」
次にコミュニティについてです。
「コミュニティ」というのは比企起業塾という場そのもののことです。
本の中では
「大事なのは、自分にとって『ホーム』と呼べるようなコミュニティを見つけること。気軽に立ち寄ることができて、何でも相談できる仲間がいる、溜まり場のような環境」
ということが書かれてあります。
まさに比企起業塾のコミュニティはそういう環境になっていて、しかも後からもどんどんそういう人たちが引き寄せられてくるのを感じています。
そしてどんどん学び合いながら、成長しあっていくのを間近で見ています。
そう考えると居場所、つまり環境というのは、そこにいることで自分も変わるし、同時に自分も仲間の変化に影響を与えるということがいえるかと思います。
人間は社会的な動物といわれるように、一人では生きることができませんので、周囲にどういう人がいる環境を選ぶかがとても大切です。
そのときに、自分が望むような生き方をしている人たちがいる居場所を選ぶことで、自分も変われるし、同じように変わりたいと考えている人の力になることもできるのではないかと考えています。
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以下、参考として本書で気になった箇所をまとメモとして公開しています。
(「⇒」は個人的な意見、感想メモです。)
また、忙しくて本を読む暇がない、ここに書かれていることを何度も読み返したいという方に向けて、音声配信アプリstand.fmのチャンネル「地域でしごとをつくるラボ」でも本書『成功する起業家は「居場所」を選ぶ』のご紹介をしています。
よろしければこちらも合わせて活用してみてください。
stand.fm「地域でしごとをつくるラボ」でのご紹介はこちら。
まとメモ
・大前研一氏
「自分を変えるにはどうしたらいいか。私が昔から使っている簡単な方法が3つある。時間配分を変えること。住む場所を変えること。そして付き合う人を変えることである。」
→ 自分を変えるには環境を変えるのが良い
・成功を自分の能力だけに頼る必要はない。居場所を変え、周りに助けてもらえるような環境に身を置けば、たった1人で自己啓発しなくても、あるいは自分だけが勉強しなくても、自分の能力はおのずと高まるはず
・周りの人たちがその環境のおかけで成功すれば、それは自分自身の成功とも言える・・・「自分の成功」という利己的な振る舞いで環境を良くしていくことが、「周りの人の成功を助ける」というある種の利他的な行為にもつながる
・「自分の周りの環境をよくすることで自分自身を向上させる」という考えを皆が持てば、皆が環境を良くしようとしてくれる。そして環境が良くなれば、周りの人たちもその便益を得る
⇒ まちづくりにも通じる考え方!
・「起業という目的があるのなら、その目的に最も適した環境に一歩踏み出してみよう」
・環境の構成要素の「4つのP」
Place(どこでやるか?)
People(誰とつながるか?)
Practice(どう訓練するか?)
Process(どう仕組みをつくるか)
・「チームの環境を作る人」が新たなリーダーである
1章 限界と課題、そして環境の影響力
・学校が提供できるメリットは、学生同士がそこにいることであり、同じ学び手同士のつながりを作れること
・スタートアップのアクセラレーターの本来的な存在価値は、提供する支援プログラムではなく、スタートアップが育ちやすい環境づくりではないか
・起業家は学び続けなければならない職業
・「起業家はリスクを取る」と言われるが、実は「セーフティネットがあるからリスクを取れる」
→ 生まれやお金は変え難い/得難いが、人脈は手軽に手に入るセーフティネット
2章 Place 起業で直面する問題は場所が解消する
・多様なネットワークはイノベーション創出の度合いを3倍にする
⇒ 行きつけのサードプレイス、マージナルな場所(役割が明確でない場所)を持つ
3章 People 起業家の力を引き出す「人」の存在
・良い「壁打ち」ができる相手が身近にいるか
4章 Practice 素早く成長するための練習法
・自己効力感を高めて新しいことを学ぶ意欲を維持するには、最終目標にたどり着くまでの間にいくつかスモールゴールを設けて、早めに成功体験を得るのが大事
・起業家になるための資質は練習すれば身に付く
→ 誰もが学習と練習を通して「起業家になる」
5章 Process 意思決定の役に立つプロセス改善
・起業家にとって、意思決定は最も重要で最も難しい業務の一つ
・進むべき方向が間違っていたら、その進捗は無駄になってしまう。だからこそ考える時間を確保するのが大切で、そのためのプロセスを定めることは競争優位性になる
7章 自分に合った環境を賢く選ぶ方法
・起業家は、自分の成功のためにも、同じ学校の人たちのためにも、皆で卒業生ネットワークを意識的に作ることが重要です。そして大学や政府にとっても、大学の卒業生ネットワーク構築を手助けすることは、将来の優れた起業家を生むことにつながる
・強いつながりは閉塞的なつながりなので、結束力が高まる。裏切った時のコストが高く付くという面もあるため、お互いに恩義を感じやすく、信頼関係が育まれやすい。
弱いつながりは、新しい情報を入手しやすくなるものの、何かを一緒に始めるという行動にはつながりづらい
・複数のコミュニティに所属して自分の関係流動性を高めておくことで、嫌なコミュニティから出ていくことが容易になる
・起業という行為が多くの人にとって「許容可能な損失」の範囲内になりつつあるかもしれない
特別対談 伝説の起業家・鎌田富久氏と語る
・新しい挑戦には失敗が付き物。・・・起業と環境の関係性について考える際、まず大事なのが「リスタートしやすい環境」「何度でもチャレンジできる環境」が身近にあるか
→ 「良いチャレンジだったね」「次はもっとうまくできるよ」と言ってくれる人がいるかどうかが非常に重要
・大事なのは、自分にとって「ホーム」と呼べるようなコミュニティを見つけること。気軽に立ち寄ることができて、何でも相談できる仲間がいる、溜まり場のような環境
・集中して仕事をこなしつつ、必要な時にすぐ相談できる環境が理想
・誰もが気軽に相談し合えるオープンな場所を作りたいなら、場づくりの中心を担う人物は複数人いたほうがいい
・成功する人は「断らない」。何でもまずはやってみる。やめるのはいつでもできるので、可能性のほうを取る
8章 Place 学びを加速させる場所に育てる
・「適切なタイミングで適切な場所にいた」ことが成功の秘訣だといわれることもある。適切な場所にいなければ何も起こらない。タイミングを自分で選ぶことはなかなかできないが、自分の居場所はある程度自由に選べる
・新たに来た人たちが手を付けてもいいと思えるような余白を作っておくと、自由に何かを試すような行動を誘発することができる。最初から完全に設計され、美麗で機能的な「使う場所」ではなく、使う人たちが「一緒に育てたいと思う場所」をどうデザインしていくかという視点で場所を育てていくことが大切
・会社も一つの場所だと考えると、起業をすることで、その人は一つの場所を新たに生み出すことになる。会社とは単なるオフィス空間ではない。さまざまな人の結び付きを生む場所でもある
9章 People 皆で成長していくネットワークを作る
・起業のメンターは、相談に乗ってくれるだけではなく、きちんと手を動かし、時には誰かにつないでくれるようなサポートをしてくれる人かどうかが大事
・クリエイティブコミュニティを作るための4つのポイント(4つのタイプの人々を含むこと)
①一流の教師:職業や業界のパターンやノウハウを伝授してくれる人
②相補的なパートナー:自分の欠点や苦手なことを補うような特徴を持った人
③創作の女神:モチベーションや刺激、新たなアイデアを出してくれる、ライバルのような人
④卓越したプロモーター:宣伝をしたり、自分の名声を分け与えてくれる人
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