自分事としての「しごと」
今回取り上げるのは、「働き方研究家」として知られている西村佳哲さんの著書『自分の仕事をつくる』です。
この本は3年くらい前に、私の「しごと」観に大きな影響を与えてくれた1冊です。
そんなわけで今回は「しごと」観について振り返ってみたいと思います。
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私は公務員を退職する前、「自分の仕事」ってなんだろうと悩んでいた時期があります。
そんなときに出会ったのが、当時の私の悩みをそのままタイトルにしたようなこちらの本でした。
本書で「自分を満たす、ジブンゴトとしての仕事」という言葉と出会い、仕事とは「私事(しごと)」でもあるという想いを強くしました。
その頃から「仕事」と「私事」の意味を含めた平仮名の「しごと」を使うようになったことを思い出します。
本書の中にこんな一節があります。
私たちが会社から仕事を買っているとしたら、そこで支払っている対価は何だろう。それは時間である。そして時間とは私たちのいのちそのものである。
会社に勤めているということは、自分の時間=命を支払っているということです。
この一文を読んだとき、「自分の命、人生をかけられるしごとなのか」という問いを突き付けられたような気がしました。
また、同時に、その頃妻が第2子を妊娠中だったのですが、「自分の子どもたちに誇りを持って話せるしごとがしたい」と強く思うようになりました。
「自分の人生という時間をかけるに値するしごとか」
「子どもに誇りを持って話せるしごとか」
この2つの問いは、私がしごとを選ぶときの判断基準にもなっています。
そういう意味では、今の私の原点になったともいえる本かもしれませんね。
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以下、参考として本書で気になった箇所をまとメモとして公開しています。
(「⇒」は個人的な意見、感想メモです。)
また、忙しくて本を読む暇がない、ここに書かれていることを何度も読み返したいという方に向けて、音声配信アプリstand.fmのチャンネル「地域でしごとをつくるラボ」でも本書『自分の仕事をつくる』のご紹介をしています。
よろしければこちらも合わせて活用してみてください。
stand.fm「地域でしごとをつくるラボ」でのご紹介はこちら。
まとメモ
まえがき
・人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。そして、それが足りなくなると、どんどん元気がなくなり、時には精神のバランスを崩してしまう
・この世界は一人一人の小さな「仕事」の累積なのだから、世界が変わる方法はどこか余所にではなく、じつは一人一人の手元にある。多くの人が「自分」を疎外して働いた結果、それを手にした人をも疎外する社会が出来上がるわけだが、同じ構造で逆の成果を生み出すこともできる
1 働き方がちがうから結果もちがう
・「時は金なり」という言葉があるが、人が時間と貨幣を、貨幣と時間を交換するアイデアを得た頃から、時間のかかる仕事は効率化を迫られるか、あるいは特殊な工芸品として別扱いされるようになった。
・多くの仕事の現場で効率性が求められている。しかし、なんのために? 大半は経済性の追求にあって、仕事の質を上げるための手段ではない。もちろん速度や勢い、リズムは、良い仕事には欠かせない要素だ。しかし経済価値と、その仕事の質的価値では、ベクトルの向きが最初から異なっている。
合理的であること、生産的であること、無駄がなく効率的に行われることを良しとする価値観の先にあるのは、極端に言えばすべてのデザインがファーストフード化した、グローバリズム的世界だ
・生きてゆくということは、いろんな人の”仕事ぶり”に24時間・365日接しつづけることだとも言える
・ほかの人の成功事例をマネすることが、成功への近道だった時代がありました。そうした時代には、決められた設問に正確な解を出す学習法が有効だったのは事実です。しかし、ほかの人の成功事例をマネすることが、必ずしも自分の成功を約束するものではなくなったのが、いまの時代です。昨日までの成功は、今日の成功を意味しません。そのような時代に大切なのは、やはり創造力です
・失敗から学ぶことで人の認識は深まり、モノは進化する。失敗は、まだ見えていない可能性を開く扉だ
・自信とは文字通り自分を信じることであり、本来的には他人から与えられるものではない。本人が自分自身で抱くものでなければ、継続的な力の源泉にはならない
・仕事は自分をつくり、自分を社会の中に位置づける、欠かせないメディアである。他者に必要とされ認められ、自分に自信が持てるいい仕事をしたい私たち
・仕事の主体は「働く人」本人。であるにもかかわらず、その働きがまるで他人事のようになされてしまう、そのような仕事や働き方の構造に、そもそも根深い問題があるのだろう
2 他人事の仕事と「自分の仕事」
・彼らの仕事の価値は、彼ら自身の存在に深く根ざしている。しかしそもそも仕事の本質的な価値は、そこになかったか。誰が、誰のために、それをつくっているのかということ。どこの誰がつくったのかわからない山のようなモノゴトに囲まれて生きている現代の私たちの世界は、むしろ異様なものかもしれない
・彼らの仕事が持つ魅力の源泉は、働く中でつくり手本人が感じている喜びや快感にある。またその仕事の感覚は「いつか」ではなく、いまこの瞬間に向けられている。彼らは仕事において「今この瞬間の自分」を疎外しない。自分がほかでもない自分であることで、その仕事が価値を持つことをよく知っている
・GDPの数値が、豊かさの実感や人生の充実感に直結するわけではないことは、既に知っている。自分を満たす、自分事としての仕事。
もちろん、会社で働くことと個人で働くことを、対立的に捉える必要はない。要は、仕事の起点がどこにあるか、にある。私たちはなぜ、誰のために働くのか。そしてどう働くのか。「頼まれもしないのにする仕事」には、そのヒントが含まれていると思う。
3 「ワーク・デザイン」の発見
・仕事とは、社会の中に自分を位置付けるメディアである。それは単に金銭を得るためだけの手段ではない。人間が社会的な生き物である以上、生涯における「仕事」の重要性は変わることがないだろう。自分が価値のある存在であること、必要とされていること。こうした情報を自身に与えてくれる仕事には求心力がある。あらゆる仕事はなんらかの形で、その人を世界の中に位置づける
・人は能力を売るというより「仕事を手に入れる」ために、会社へ通っている。そんな側面はないだろうか。・・・私たちが会社から仕事を買っているとしたら、そこで支払っている対価はなんだろう。それは「時間」である。そして時間とは、私たちの「いのち」そのものである
・仕事を「自分の仕事」にするポイントは、仕事に自分を合わせるのではなく、自分の方に仕事を合わせる力にある
・自分の仕事に対するオーナーシップを、常に自分自身が持っていること。その仕事を通じて、学びを拓きつづけていくこと
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