オンラインセミナー「地元経済を創りなおす 地方の経営者が今できること」
2021年9月10日(金)14:00~15:00、THE OWNER主催のオンラインセミナー「地元経済を創りなおす 地方の経営者が今できること」に参加しました。
登壇者は大学院大学至善館教授、幸せ経済社会研究所長の枝廣淳子さん。
以前に、枝廣さんの著書『地元経済を創りなおす』を読んで、漏れバケツ理論や地域内での経済循環を生みだすことの重要性を再確認したことがあり、今回のオンラインセミナーもそれに沿った内容とのことで興味がありました。
セミナーで気づいたこと、考えたことのメモを公開します。
以下、まとメモです。
まとメモ
地方の経営者が生き残るためにやるべきこと
●地方の二極化
①元気と勢いの感じられるイキイキした町
→ 新しい動きが次々起こり、移住者がどんどん入ってくる
②よどみ感の広がる活力の感じられない町
●地方の経営者が、アフターコロナ時代にできること、やるべきこと
・感染症の時代が終わらないことを前提にする(人間の活動領域拡大、気候変動など)
・生き残ること!
→ 経営を持続していること自体が地域にとって価値がある
→ 続けられないと地域にとっては大打撃となる
・地域のレジリエンスを高めること
●地域の企業が生き残るために
・事業を再構築する
→ ウィズコロナ=人の移動と接触が制限される時代
→ しのぐのではなく、変える
→ 人間の基本的な欲求、二ーズをもとに再構築する
・環境、SDGs対応力を高める
→ コロナに関係なく、生き残れる企業体質に(プラスチック新法、脱炭酸化・・・)
折れないまちづくりに必要なもの
●折れないまちづくりに必要な2つの要素
①ぶれない芯=地域の未来の共有ビジョン
②外部に依存しすぎず、持続できる地域経済
●地域の共有ビジョン
・バックキャスティングで未来の望ましいまちの姿を描く
・つながり(システム思考)
・変化
→ 悪循環を断ち、好循環を強めるプロジェクトを立案、実行
●外部に依存しすぎず、持続できる地元経済を創る
・漏れバケツモデル
→ 地域に入ってきたお金(補助金、企業誘致、観光・・・)が地域外に流出してしまう
・大事なことは、地域に入ってきたお金を何度も地域内で回すこと=域内循環
・循環率20%の場合 → 約12,500円の効果
・循環率80%の場合 → 約50,000の効果
●漏れバケツの現状を知る
・地元経済の見える化が必要
・市町村の産業連関表
・買い物調査
⇒ RESASの地域経済循環図の可能性
●北海道下川町
・赤字のエネルギー部門に対して、木質バイオマス発電を導入することで、域内生産額アップ、雇用創出につながった
・年間2億円以上の流出防止につながっている
・加えて、余熱利用による新規産業も生まれ、UIターンも増加し、転出者数を転入者数が上回っている
・持続可能な循環型森林経営の仕組みも構築
→ 年間50ha伐採、50ha植林を60年で循環させる
→ 3000haあれば可能
→ 高校まで15年間の森林環境教育プログラムを確立
持続可能な地域づくりのための3つの循環
●持続可能な地域づくりのための3つの循環
①人の循環
②お金の循環
③資源の循環
・行政だけでは実現不可能
・いずれも民間事業者の役割が非常に重要
●リ・ローカライゼーション
・地元が自分たちのたずなを握り直すこと
●地消地産
・地産地消ではなく、「地消地産」
・地元の住民や事業者が購入しているものを、地元の資源を使って提供できないかという視点を持つ
●横浜市の事例
・分離・分割発注により、一定金額以下の一般競争入札は市内中小企業に参加者を限定
・市の補助金を活用して行う100万円以上の工事の発注は、原則として市内事業者へ
・結果、平成29年の市内発注の割合は約77%に
地方の経営者に求められる力
●地方の経営者に求められる3つの力
①構想力
・不確実な中でも思考停止に陥らず考え続ける力
・先を見通し、いくつかありうる未来を描く力(シナリオプランニング)
・これまでの枠から外れる勇気
②実現力
・変化の連鎖をデザインする力
・PDCAを回し着実にするマネジメント力
・人や地域を巻き込むコミュニケーション力、合意形成力
③土台、人間力
・時代、社会の要請の理解、共感
・共に新しい時代をつくるという気概
感想
地域内で「人」「お金」「資源」の循環をつくる考え方は、私が仕事上でもっとも重視していることと重なります。
先日、地方創生の好事例として有名な島根県海士町での、ふるさと納税を財源とする「海士町未来共創基金」を活用した事業づくりに関するプレスリリースがありましたが、まさこの3つの循環を生むお手本のような事例だと思います。
※ 海士町の「海士町未来共創基金」を活用した事業づくりに関するプレスリリースはこちら。
また、最近興味を持っている地域通貨も、地域内でのさまざまな価値を交換し、循環させる仕組みだといえます。
もちろんすべてを地域内で調達することに固執しすぎると、逆に排他性が強調されてしまい、閉鎖的なイメージを与えかねないので注意は必要ですが、他を頼りすぎず自立する意識を持つことは、地域住民や地域で活動する事業者の自主性を高めるという意味でも重要なのではないかと思います。
「自分たちのことは自分たちでやる」
枝廣さんも話していたように、 事業者が経営を持続できていること自体、地域にとって価値があることです。
経営が持続すれば地域住民に商品やサービスが提供され、納税も行われるからです。
当たり前といえば当たり前なのですが、地域づくりはもちろん、生きる上で結局それが一番基本的で、一番重要なことなのかもしれません。