一般社団法人ときがわ社中の良きヒント
「machimin」は、これからスタートする一般社団法人ときがわ社中の活動の良いヒントになる――
本書の最初にあったmachiminの紹介文を読んだときにそんな直感がありました。
「まちをつくる」ことよりも「みんなでつくる」ことを重要だと思っています。そして、「みんなでつくる」ために1人ひとりがやりたいこと、”好き”や”得意”を活かして成長できる”場”を目指しています
このことは一般社団法人ときがわ社中を一緒に立ち上げた仲間と話していることとも方向性が一致します。
machiminと一部違うことがあるとすれば、machiminが「好き」や「得意」を活かして成長できる場という比較的上昇志向的な意味合いが強く感じられるのに対し、
ときがわ社中では、「好奇心」から始まる予測不可能な共創そのものをまず楽しむ、その先に関係する人やまちの幸せがあるといいな、というややふんわりしたイメージがあることでしょうか。
つまり、これからつくろうとする何かの具体的な形があるわけでもなく、おもしろい人とのつながりの中から、まちの人が幸せに、まちがおもしろくなるようなものを一緒につくっていくことを目指しています。
このような違いを感じながら、ときがわ社中の概念を顕在化できたのは大きな収穫でした。
また、私が思い描いているまちの姿はこういうことなんだと腹落ちした言葉が、本書の最後に掲載されていた流山市長の井崎氏と手塚氏の対談の中にありました。
まずは井崎市長の言葉です。
(井崎市長)
おもしろい発想を持っている方が「やりたいことをやってもいいんだ」「やれるんだ」と確信していただけるまちにしたい。そうすると流山ライフがもっと豊かで楽しく、素敵なまちになるのではないでしょうか
次に本書の著者である手塚氏。
「あのまちが素敵だから引っ越す」ではなく、「自分で素敵なまちをつくりたいから引っ越す」というところにぐるっと一周して行き着きました
これらの言葉に関してはまったくの同感です。
唯一、付け加えることがあるとすれば、「誰とやるか」という視点でしょうか。
私は2020年3月に公務員を退職して起業しましたが、起業してからの1年間、これほど「誰とやるか」の大切さを感じたことはありませんでした。
なぜならば、行政は相手にするお客さん(住民)を選ぶことはできないけれど、起業家はお客さんを選ぶことができるからです。
また、お客さんと同じくらい、一緒に事業をつくってくれるパートナーを選ぶという視点も大切だと実感しました。
自分や家族を大切にしながら、付き合いたいお客さんを相手にして、好きな仲間と楽しく仕事ができる。その延長としてまちをおもしろくすることができる。
それが起業家としての理想の私の働き方なんだと。
そんなことに改めて気づかせてくれた1冊でした。
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以下、本書のまとメモです。
気になったところを抜粋しています。
まとメモ
はじめに
・「まちをつくる」ことよりも「みんなでつくる」ことを重要だと思っています。そして、「みんなでつくる」ために1人ひとりがやりたいこと、”好き”や”得意”を活かして成長できる”場”
・machiminでは、ゆるやかに人が集まり交流するコミュニティスペースの体裁をとりながらも、市が誘致したまちを構成する人や地元の人を活かすことを事業の目的に設定しています。それはまちのために働け、まちをよくするために生きろ、というのとは異なります。人がよりよくまちで生きていくためにこそ、人が生きている状態をつくっていくこと
流山市に移住。machiminをはじめるまで
・地域活動で自身の能力を発揮して必要なお金を稼ぎ仕事にし、遊び・学び・働くを融合させることさえできれば、そこで生まれた経験や知識や人脈は自分だけでなく子どもや生活にも還元される
・いわば、今までの活動は採用のためのインターンでもありました。残ってくれたメンバーは人事部長の育成対象となり、machiminを運営しながら共に成長していく仲間となりました
・machiminや地域資源(ヒト・モノ・コト)を活用して、「壁を壊して、輪を創り」つつ、「まちを学校に」していく循環や仕組みづくり
machiminという”場”はどのように育ったか
・「株式会社」が運営するmachiminの中で悠生くんが「株式会社流山市」でインターンをしていると言っても過言ではない経験は、目の前のmachiminの営業活動の成否にも直結する重要な役割です。非営利目的でも営利を生み出す活動に従事することによって、非営利のボランティアへの参加とは違って、地域社会の中で企業活動を実績しながら学ぶことができる
・machiminとは一種の実験場=ラボ、だと言えるでしょう。失敗しても成功してもいい、そもそも失敗して前進することが大事というニュアンス
・個人の”好き”や”得意”を「まちのコンテンツ」にしていきながら、主体性を引き出し、モチベーションを高め、人に喜んでもらうことで自己肯定感を高めていく仕掛けのあるラボです
・個人の”好き”や”得意”を地域社会の営みに結びつけようと思いました。”好き”や”得意”から始まることなら、自分がリーダーとして進めることができますし、各々が自身のペースを乱さず、他人の取り組みを妨げることなく、でも人を巻き込み、そしてまちを巻き込み、コンテンツ開発の過程で自分自身を開発していくことができます
・個人の”好き”や”得意”がまちに着地すると、まちはエリアや特性があるため自由度が落ちます。落ちることで、抽象的なことが具体的なことになることが多くあり、コンテンツになりやすい印象
・大切なのは場より人。人が場を作るのですから、人に一番投資することにしています
・「投資に値する人かどうかを見極める」ときに注視しているのは、machiminの価値を高める能力の高い人…とか、流山市の地域づくりに興味があり今すぐ貢献できる人…ではありません。その人の”壁”が壊れたこときに次の誰かのロールモデルになる可能性が高く(=共感度の高い悩みがある)、誠実で嘘がなく、他者に優しく、自分が使える自由な時間があり、行動を起こす勇気をほんの少し持っていて、自分の”好き”や”得意”を活かして地域の新たな価値を自ら生み出せたらいいなと感じているヒトです
・地域の課題を解決するプレーヤーやリーダーを育てること、将来的に自走する地域リーダーの排出を目指して活動することがまちの人事部長の仕事
・まちに何かが足りない、何かを変えたい、ないものをほしいと感じたときには、自分たちで創るのです。それを楽しみながら、その過程でまちを知り、まちの方と仲良くなります。さらに、まちと一緒に自分自身も成長しながら、まちに必要なモノやコトを生み出していくのです
・まちづくりを通じて、必要なお金を住民自身が自分で稼げる社会をつくることが必要となる時代が、目の前に来ている
machiminにはなぜ人が集まるのか
・センセイは、何かを教えてくれる人ではありません。誰よりも、楽しそうに、夢中で挑戦し、前進している人です。唯一教えるとすれば、それは知識ではなく「取り組む姿」です
machiminが多拠点に進化・発展する
・ヒトの精神的・経済的な自立とそれを促す周辺環境を整えることがmachiminで行うヒト研修ですが、ヒトの自立=研修終了とした時に、個人の意思でmachiminや私との関わり方を決断することが研修(まちの人事部長による人材育成)の「最終章」です。
→ 判断する3要素
①自信や自己主張がある
②物理的な条件が揃っている(収入、仲間、時間)
③自分の判断軸を持っている
・できること・やりたいことの詳細が明確になり、経済的にも自立の兆しが見え始めると、自身の「~したい」を実行するための時間が必要となります。同時に、研修はありがたいものではなく、時間を奪うものになるため、研修に割く時間を減らしたいと思うようにもなります
・大切なのは”1人のセンセイにつき1つのバショ=教室”をもつこと
・参加したいと思う人にとってわかりやすいバショにすること
・その教室のラボ機能を強化すること
・オープンにして多様性でぐちゃぐちゃになるまで広げて、お客さん・常連さん・スタッフに自然と別れてきたら「スタッフ」に徹底投資し、さらにスタッフの個性がはっきりしてきたら、それぞれの強みを軸にコンセプトを作り、そこに足りない存在を求めてまた多様性でぐちゃぐちゃになるまでオープンにしていきます。その連続で拡大成長し、自立したコミュニティになり、1センセイ1machiminになれば、まちの課題の数だけ、ヒトの数だけ、machiminができることになります
CROSSTALK 流山市長(本物)×「株式会社流山市」の人事部長(自称)
・(井崎市長)おもしろい発想を持っている方が「やりたいことをやってもいいんだ」「やれるんだ」と確信していただけるまちにしたい。そうすると流山ライフがもっと豊かで楽しく、素敵なまちになるのではないでしょうか
・「あのまちが素敵だから引っ越す」ではなく、「自分で素敵なまちをつくりたいから引っ越す」というところにぐるっと一周して行き着きました