学生との意見交換から生まれた「新しいバリューチェーン」という言葉

12/12(月)、法政大学GMBA(グローバルMBA)コースの学生の皆さまがときがわ町に来てくれたとき、学生のAnnaから「新しいバリューチェーン」という言葉が生まれました。

この言葉を聞いて、私の頭にいろんなインスピレーションが湧いてきました。

その場では深掘りできませんでしたが、非常におもしろかったので忘れないうちに書き留めておきたいと思います。

「新しいバリューチェーン」とは

「新しいバリューチェーン」という言葉が生まれたきっかけは、Annaからの次のような質問を受けたことでした。

「ときがわ町にはいろんな産業がある中で、たとえば林業では木を伐る人、それを製材する人、木材を使って家や建具をつくる人など、実際に使う人までの間にあるバリューチェーンが途切れている、あるいは薄くなってきている。比企起業大学を受講したミニ起業が増えることで、新しいバリューチェーンがつくられる可能性がありますか?」

こんなニュアンスだったかと思います。

それに対して、比企起業大学総長の関根さんはこのように答えました。

「林業に限らず、私たちが比企起業大学でやろうとしているのは、たくさんのミニ起業家を生み出すこと。それによってときがわ町を、起業したい人が集まってくるような場所にしたい。そういう人が増えてくれば、林業に取り組むような人も出てくるかもしれない」

その話を聞いていて、私の中に「新しいバリューチェーン」のイメージが浮かんできました。

従来のバリューチェーン

まず、これまでのバリューチェーンについて考えてみます。

生産者から消費者に至るまでのいくつかの流通を、よくわからないどこかの会社が担っている。
そこではどんな会社なのか、どのように流通してきたのかもわからないブラックボックスになっているのではないか。

そのため生産者も消費者も流通事業者も、お互いの顔がわからず、ただ移動してくるモノにしか焦点があたっていなかった。

そしてそのモノも、どんなモノなのかという個性がはっきりせず、ただのモノとして扱われていたような気がします。

「新しいバリューチェーン」

次に「新しいバリューチェーン」とはどんなものかイメージしてみます。

地域にいろんなミニ起業家が生まれて、生産者と消費者をつなぐようになったらどうなるか。

ミニ起業家は一人経営者であることが基本なので、自ら生産者と消費者をつなぐことができる。
場合によっては生産者自身が消費者に直接届けることもあるかもしれないし、1者ではなく複数のミニ起業家が介在して消費者に届けることになるかもしれません。

また、消費者も単なる消費者として待っているだけでなく、ある分野では自ら生産者として活動する中で、ほかの生産者と直接やり取りすることもあるかもしれません。

そうすると当然、お互い顔と顔が見える関係で結ばれることになります。
それが「新しいバリューチェーン」なのではないかと。

また、そうした「新しいバリューチェーン」の中では、生産者と消費者の距離が近い、あるいは曖昧なので、運ばれるモノの背景やストーリーもダイレクトに受け取ることが可能になります。

考えてみると、今のように流通業が発達する以前は、地域ごとにそのような小さなバリューチェーンがあって、モノが循環していたはずです。

違いは、かつてのそれは地縁的な要素が強かったのに対して、「新しいバリューチェーン」は地域性と人が掛け合わさったところに生まれてくるのではないかということを感じました。

ここはまだうまく言語化できていませんが、突き詰めていくとおもしろそうです。

「新しいバリューチェーン」から生まれる経済的価値

ミーティングの冒頭に、関根さんがこんな話をしてくれました。

「海外の文献では、ミニ起業家(self-employed)には批判的な意見もある。雇用も生まないし、経済的な効果が小さいということが理由」

確かに比企起業大学が育成を目指しているミニ起業家像は、年商300万円~1000万円で、従業員を雇わない1人経営者が基本にあります。
雇用も生まないし、経済的なインパクトも小さいように思えます。

ただ、「地域に残るお金」ということを考えてみると、経済的なインパクトの捉え方が変わってくるのではないかと思います。

地域にたくさんのミニ起業家が生まれることで、それまで地域の外から買っていたものを地域の中で買うことができるようになるかもしれません。
あるいは地域の外の企業に頼んでいた仕事を、地域の人に頼むことができるようになるかもしれません。

そうすることで地域に落ちるお金の総量が増えますし、それを地域に再投資していくことで複利的な経済効果が生まれることになります。

もちろん、すべてを地域内で完結しないといけないということではありません。
それではただの鎖国になってしまいます。

私が言いたいのは、地域の中、あるいは周辺でお願いできる人がいるなら、あえて地域の外の知らない企業にお願いする必要はないのではないか、ということです。

同じお金を使うなら、やっぱり知っている人を応援するために使いたいです。
商品を買うこと、しごとをお願いすることが、ミニ起業家にとっては一番の応援になるからです。

以上、法政大学GMBAの学生の皆さんとの意見交換から生まれた「新しいバリューチェーン」について、考えたことをまとめてみました。

まだ言語化できていないことも多いですが、「ミニ起業家が集まるフレンドリータウンとしての特徴や強み」に関する学生の皆さまとの研究を通じて、引き続き考えていきたいと思います。

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