こんにちは!
さて、今回のRESASコーナーは、ときがわ町編の第2部「地域経済循環マップ」シリーズの第2回です。

「RESAS」とは、内閣府が提供している地域経済分析システムのことで、都道府県や市区町村に関するさまざまなデータを視覚的に見たり、活用したりできるシステムのことです。
※「RESAS」という言葉を初めて聞く方、聞いたことはあるけれど、よくわからないという方は、こちらのページもご覧ください。

前回は、埼玉県比企郡ときがわ町を舞台に、RESASの「地域経済循環マップ」から、「地域経済循環図」を取り上げました。

ときがわ町の「地域経済循環図」の詳細はこちらから

「地域経済循環図」は、「生産」「分配」「支出」「地域経済循環率」という4つの要素から成っており、このうち「地域経済循環率」については前回ご説明しましたので、今回は残りの3つに焦点を当てていきます。

1 「地域経済循環マップ」とは? 
2 ときがわ町の産業と経済
3 ときがわ町の地域経済循環図 → 前回
4 ときがわ町の生産分析 → 今回はここ
5 ときがわ町の分配分析
6 ときがわ町の支出分析
 
7 まとめ

なお、当初は、生産分析から支出分析までを一気にやろうかと思いましたが、かなりボリュームのある内容になってしまいますので、やむをえずそれぞれ個別に掘り下げることにします。
(それでもかなりのボリュームになっていますので、あまり気負わずに軽い気持ちでお読みください笑)

ときがわ町の生産分析

まずは「生産分析」です。

「生産」は、町内の第一次産業(農林業など)、第二次産業(製造業、建設業など)、第三次産業(その他の主にサービス業)が、それぞれどれだけの付加価値額を生産したかを示しています。
ざっくり、売上から原材料費などの経費を除いたものが付加価値額です。

前回見たように、ときがわ町の「生産」は、

・農業や林業などの第一次産業の付加価値額が、第二次・三次産業に比べて極端に小さい
・第二次産業の付加価値額が第三次産業よりも大きい

ということが特徴でした。

「生産分析」では、ここをもう少し掘り下げて、どのような産業がどのくらいの付加価値額を生み出しているのかといったことや、業種ごとに占めている付加価値額の割合、または地域内の産業がほかの産業から受ける影響やほかの産業に与える影響などを見ることができます。

表示できる内容は、「生産額」「付加価値額」「雇用者所得」「移輸出入収支額」の4つで、それぞれ「総額」「一人当たり」「修正特化係数」という指標が用意されています。
ただし、「移輸出入収支額」や「修正特化係数」はこの後の「産業構造マップ」でも取り上げますので、ここでは割愛することとします。

【基本操作】
・メインメニュー「地域経済循環マップ」→「生産分析」
・右サイドバーで、「市区町村単位で表示する」にチェック
・「埼玉県」「ときがわ町」を選択
・表示年を指定する「2013年」(最新データが2013)

※設定していく際に、メイン画面にある地図データも連動して表示されます。
本来なら地図データと組み合わせて活用できるのがRESASの特徴の一つなのですが、1自治体レベルの中だとそれほど有意義なデータは得られないため、ここでは地図データは扱わないことにします。

(1)生産額

まずは「生産額」を見てみましょう!

【上の基本操作の続き】
・表示する内容を指定する「生産額」「付加価値額」「雇用者所得」「移輸出入収支額」から、「生産額」を選択
・表示する指標を指定する「総額」「一人当たり」「修正特化係数」から、「総額」を選択
・表示産業を指定する「すべての大分類」「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」から、「第二次産業」の「鉱業」を指定
 → 「すべての大分類」以外であれば、中分類別のデータを見ることが可能

「生産額」について表示できるデータは、「地域内産業の構成を見る」「グラフを表示」「影響力・感応力分析」の3つです。

地域内産業の構成を見る

まずは「地域内産業の構成を見る」をクリック!

出典:RESAS

とってもカラフルな図が表示されました!

表示されているのは、中分類別の業種ごとの生産額です。
第二次産業だけでなく、第一次・第三次産業に含まれる中分類も、その生産額の大きい順に表示されています。
占める面積が大きいほど、ときがわ町内全体の生産額中で占める割合が大きい産業であることを示しています。

この図を見ると、「鉄鋼」と「輸送用機械」を足すと半分近くを占めていることがすぐにわかるのではないかと思います。(鉄鋼業も輸送用機械も第二次産業)
山林が面積の7割を占めるときがわ町で、「鉄鋼」や「輸送用機械」の生産額が大きいというのは何だか意外な気がしませんか?
(ちなみに「輸送用機械」とは、車などのことです)

思い込みやイメージといった感覚的なものではなく、実際の数字で把握できるというのは、データを使う大きな意義でしょう。

続いて、図の右側に表示されているメニューバーにある「構成割合をグラフで見る」をクリックします。
すると、産業大分類別の構成割合、第二次産業の中分類、第三次産業の中分類ごとの、それぞれの構成割合を示した図が表示されました。

出典:RESAS

大分類別の構成割合では、埼玉県や全国と比べても、ときがわ町では第二次産業の締める割合が大きいということが確認できました。(「指定地域」というのは、ここではときがわ町のことです)

出典:RESAS

こちらは第二次産業の中分類別の構成割合のグラフ。
小さくて見づらいかもしれませんが、埼玉県全体や全国と比べても、やはり「鉄鋼」「輸送用機械」の割合がかなり大きく、第二次産業だけだと、この2業種で過半を占めていることが視覚的にわかります。

出典:RESAS

こちらは第三次産業の中分類の構成割合のグラフ。
全産業の中分類の構成割合(地域内産業の構成割合の最初の図)では注目しませんでしたが、第三次産業だけに絞ってみると構成比がよくわかりますね。
こちらは埼玉県、全国の構成比となんとなく似ていますね。
「住宅賃貸業」「公共サービス」「公務」などの割合が、県や全国に比べて少し大きいことが特徴といえるでしょうか。

②グラフ

ふう、やっと一つ目が終わりました。
ついて来られてますか?笑

では、「生産分析」のトップ画面に戻り、次は「グラフ」を表示してみましょう。
ここはそれほどややこしくはありません。

出典:RESAS

すべての中分類の名称が表示されていないのが不親切だったりするのですが、一番多いのが「鉄鋼」、次点が「輸送用機械」です。
先ほどの構成割合が、棒グラフになっているだけで内容は同じです。

出展:RESAS

おもしろいのは、「一人当たりの生産額」のグラフも表示されるのですが、これを見ると、生産額の総額ではそれほど上位になかった「その他の不動産業」が3位につけていたりすることです。
業種ごとの生産性ということを考えると、総額だけでなく、一人当たりの数字も見ていくと意外な気づきがあるかもしれません。
一人当たりの数字については、後ほどまた触れたいと思います。

③影響力・感応度分析

「生産額」の最後は、「影響力・感応度分析」です。
「生産分析」のトップ画面に戻り、「影響力・感応度分析」をクリックします。
ここで表示される図は一つだけです。

出典:RESAS

横軸に「影響力係数」、縦軸に「感応度係数」とあり、たくさんの点が散らばっています。
この点の一つ一つが中分類別の業種です。
(点にカーソルを合わせる、それがどの産業の位置なのかが表示されます)

ここでいう「影響力」とは、ある産業への新たな需要が起こったとき、調達先となる全産業に与える影響の強さを示します。
ある産業が他の産業にどれだけ影響を与えるかを示しており、1.0を超えるほど与える影響が大きいということになります。

また、「感応度」とは、他の産業に新たな需要が起こったとき、ある産業が受ける影響の強さを示します。
つまり、他の産業からどれだけ影響を受けるかを示しており、1.0を超えるほど受ける影響が大きいということになります。

さて、図を見ると、一つだけ飛びぬけて右上に位置している点があることに気づくかと思います。
これが何を隠そう「鉄鋼」なのです。
「影響力係数2.36、感応度係数3.73」とあります。
このことは、鉄鋼業が地域内の他の産業に与える影響が大きく、同時に他の産業からも影響を受けやすい産業であることを意味しています。

つまり、ときがわ町における鉄鋼業は、地域の経済を牽引している主力産業の候補であるといえます。
「候補」といったのは、あくまでこれは「生産分析」における「生産額」だけを見たものであり、またデータ上の推測に過ぎないからです。
地域の経済を活性化するために注力して振興する産業を見定めていくためには、「生産額」以外の多角的な視点からの分析や実際にその業種に関係のある方々の現場感をリサーチしていくことが必要かと思います。

以上が「生産額」の部です。

(2)付加価値額

思いのほか「生産額」が長引いてしまいましたので、ここからはスピードを上げていきます。
「生産分析」トップページから、表示する内容を「生産額」から「付加価値額」に入り替えます。
「生産額」と基本的な操作は同じで、「付加価値額」でもほぼ同じような図やグラフが出てきますので、違いが顕著に見られるもののみをピックアップしていきます。

まずは産業別の構成割合です。

出典:RESAS

このとおり、「住宅賃貸業」がトップに躍り出てきました。
これは、「鉄鋼」や「輸送用機械」はどうしても原材料費がかかるため、生産額は高くても、原材料費を除いた付加価値額では下位にきてしまったためと思われます。

その傾向が大分類別の構成割合にも出ています。

出典:RESAS

「生産額」では7割以上を占めていた第二次産業が、「付加価値額」では第三次産業とほぼ半々になっていることがわかりますね。
注目する指標によって地域の産業の見え方が変わるということがおわかりいただけるかと思います。

そのため「地域の主力産業を明らかにする!」といった目標があるときなどは、RESASのどの指標に注目するのか、そしてそれはなぜなのかを説明できるようにするということが大変重要なのです。

(3)雇用者所得

同じく「雇用者所得」についても見ていきましょう。
「生産分析」トップページから、表示する内容を「雇用者所得」に切り替えます。
まずは、「地域内産業の構成を見る」をクリックすると

出典:RESAS

すると今度は「輸送用機械」がトップとなり、「鉄鋼」がかなり順位を落としています。
また、「住宅賃貸業」は右下の青い四角の「2億円」にとどまり、かわりに「公共サービス」や「建設業」「公務」などの順位が上がっています。

公務員は所得が高いのか!?という議論はさておき、「雇用者所得」に焦点を当てると、こんな側面もうかがい知れるというわけです。

(4)一人当たりに置き換えるとどうなるか

「生産分析」の最後として、先ほど「生産額」で触れた一人当たりの数字に着目してみます。

まずは既出の「一人当たり生産額」。
上から、「鉄鋼」「輸送用機械」「その他の不動産業」と並んでいます。

出典:RESAS

次は「付加価値額」。
上から、「住宅賃貸業」「その他の不動産業」「鉄鋼」となっています。

出典:RESAS

最後の「雇用者所得」です。
上から、「その他の不動産業」「輸送用機械」「鉄鋼」が並びました。

出典:RESAS

さらっとまとめ

以上、地域経済循環の4要素のうち「生産分析」を見てきました。
なかなかのボリュームでしたね(汗)
お疲れさまでした。
私も疲れました(笑)

最後に「生産分性」でわかったことを簡単にまとめておきましょう。

・ときがわ町は、三次産業よりも二次産業の方が生産額、付加価値額が大きい傾向がある
・第二次産業では、「鉄鋼」「輸送用機械」の生産額、付加価値額が大きい
・第三次産業では、「住宅賃貸業」や「その他の不動産業」などの不動産関係の業種の生産額、付加価値額が大きい
・一人当たりの数字では、「生産額」では「鉄鋼」「輸送用機械」「その他の不動産業」、「付加価値額」では「住宅賃貸業」「その他の不動産業」「鉄鋼」、「雇用者所得」では「その他の不動産業」「輸送用機械」「鉄鋼」が大きい

次回は、生産から得て分配されるお金である「分配」に焦点を当てていきます。