「ランチェスター戦略」の解像度が上がる「標準化」と「差別化」

比企起業塾の課題本であり、ミニ起業家の入口であった『小さな会社の稼ぐ技術』。
こちらはランチェスター戦略の入門編として、シンプルで非常に分かりやすい本でした。

比企起業塾で学んだランチェスター戦略に本書の内容を掛け合わせると、高収益を得るためにどうしたらいいかについて解像度が上がったような気がします。

キーワードは「標準化」「差別化」です。

順にご説明していきましょう。

外から見たらイレギュラー、中から見たらレギュラー

まず「標準化」についてです。

ランチェスター戦略では「めんどくさい系」は大手がやらないので弱者にとってはチャンスということを学んできました。
ですが、それだとどうしてもマンパワーが必要になってしまい、1つの仕事に時間がかかりすぎてしまうのではないかということが課題と考えていました。

本書で得た学びはまさにその課題を解決するためのヒントでした。

外から見たらイレギュラー、中から見たらレギュラー

つまり「めんどくさい系」をめんどくさい状態のまま仕事をしていたら、ただめんどくさい仕事を代替わりしているにすぎないということです。
相手にとっては「めんどくさい系」でも、それを請け負う自社の側では「標準化」されている必要があるということですね。

この考えは非常に大きなヒントになりました。
その都度の特別対応ではなく、ある程度パッケージ化することでかかる工数を減らせるからです。

起業してほぼ1年やってきた中で、時間の制約ということをまざまざと痛感しましたので、今後は業務をパッケージ化して効率化や利益率の向上に取り組む必要があります。
もちろんそれはお客さんにとっての価値の向上とも比例していなければなりません。

これに関しては今期意識して取り組みたいところです。

本当の差別化とは

次に「差別化」です。

弱者が生き残るための戦略としては、「強者との競合を避けること」というのは言葉では理解していたのですが、本書によってさらに解像度が高まりました。

どういうことかというと、これまではただ単にポジショニングマップなどで他社とは違うポジションを築くというような理解でいました。
しかし、本書によればそれは本当の意味での差別化ではなく、他者と同じポジショニングマップの2軸上で戦っているのは変わらないというのです。

つまりポジショニングマップを使っている時点で、切り口が二軸に限定されてしまっていたのです。

ではどうすればいいかというと、本書では次のように述べられています。

本質的に差別化するためには「他社が勝負していない軸で強みをつくる」必要がある

つまり、「他社がプロットされない軸を見つけないといけない」ということなのです。
簡単にいえば、そもそも他者と比較しないということですね。

とはいえ「比較しない」と言葉で言うのは簡単ですが、どうしても人と比べてしまうものですよね。

「あの人はすごい強みがあるのに、自分には見つからない」

私もよくそんなことを考えてしまいます。

こちらに関しては簡単に答えは出ませんが、やはり1年近くやってきて、なんとなく自分に求められている役割や強みのようなものがわかってきた気がします。

パッケージ化する中で、そうしたものを一つずつ試しながら、差別化にも意識して取り組みたいですね。

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以下、本書で気になった箇所をまとメモしておきます。
「⇒」は個人の考え、感想。

本書のまとメモ

まえがき

・かゆいところに手が届く”未解決のニーズ”は宝の山です。本来は”イレギュラー”であるはずの特別対応を仕組みで廻し「標準化」することで、競合不在の”無尽蔵の市場”で大きく儲かる事業展開をすることができます

1章 特別ビジネスこそ中小企業が設ける最強の手法

・儲かっていない企業の共通点
 ①自社独自の強みがない・・・その会社の社長や社員が思っている「自社の強み」が独りよがりなもので、買い手にとってみれば「強み」とは感じられない、差別化のポイントになっていない
 ②仕組み化ができていない・・・外から見たらイレギュラー、中から見たらレギュラーという状態になっていない

・ビジネスの本質は「差別化」
 価値を生み出しているものは、その商品そのものではなく、ほかのものとの「差」

・「特別ビジネス」によって顧客の「困った」を解決することにより、顧客から感謝され、通常対応でいい注文もそれほど安くしなくても発注してくれる。一点突破で他社との明確な「差」をつければ、顧客の心に刺さり、サプライヤーとして信頼を得られる。まんべんなく、単に「いいこと」をやっていても駄目

・ポジショニングマップを使うと、戦い方の切り口が二軸に限定されてしまう
 → 本質的に差別化するためには「他社が勝負していない軸で強みをつくる」必要がある
 → 他社がプロットされない軸を見つけないといけない

・「超」がつくようなイレギュラーな対応も、社内のオペレーションは「通常」に事前に取り決めたやり方で粛々とこなせる体制が必要
= 「外から見たらイレギュラー、中から見たらレギュラー」

・カイゼンなどの部分最適化では企業は生き残れなくなっている

2章 圧倒的に選ばれるための「キラーサービス」設定の原理原則

・「儲かるビジネス」=自社独自の強みを体現する仕組み

・ビジネスモデルをつくる手順
 USP(ユニーク・セリング・プロポジション、独自の強み・ウリ) → 商品・サービス → 仕組み化 → 営業・販売

・社長が考えるべきことは、「何をすればうちは勝てるか」だけ

・商品・サービスはUSPを実現するための手段にすぎない

・商品による差別化が難しい理由
  ・千三つ(せんみつ)以下の低いヒット率
  ・モノがあるため真似されやすい
  ・ライフサイクルが短く、すぐに廃れる
  ・価格が崩れる

・サービスによる差別化が有効な理由
  ・商品が変わっても使える
  ・真似しにくい
  ・組織力強化につながる
  ・社員のモチベーションが上がる

・「すべての企業はサービス業である」

3章 儲かるキラーサービス3大パターン

(1)時間を短くする/長くする/ずらす
 ①短納期、特急対応、緊急対応
 ②長納期割引、一時保管サービス
 ③深夜対応、早朝対応、ジャストインタイム

(2)川上/川下でのサービスを展開する
 ・「いままでやってきたこと」に縛られる必要はまったくない
 一貫性はなくてもいい

(3)ノウハウ・サポートを提供する
 ・プラスアルファのサポートをする
 ・勉強会型セールスのメリット
  ①しっかりと顧客教育ができる
  ②こちらが先生のポジションを築ける
  ③セールス色が薄まる

・”儲かる”キラーサービスでないと意味がない
 有料でやるか、無料でやるか、ということではなく、そのサービスを打ち出すことにより、事業の収益性が上がるかが重要

4章 特別ビジネスを高収益化する”仕組み化・標準化”戦略

・仕事を仕組みで廻すということは、「人」を起点に考えるのではなく、あくまで全体設計としての「仕組み」を起点に考えるということ

・仕事を属人化させない4つのメリット
 ①仕事がブラックボックス化しない
 ②人への駄目出しにならない
 ③社長が仕事をお願いする必要がない
 ④社員を訓練できる

・業務を仕組み化すれば、社員が歯車になるのではなく、その仕組みが歯車になる

・業務を仕組み化する3K
 ①工程・・・仕事を進めていく手順を決める(誰が、何を、どういう方法で)
 ②紙・・・決めたことは必ず文書化し共有する
 ③更新・・・更新し続ける(社員による日常更新、経営幹部による定期更新)

5章 多くの会社がやってしまっている、会社を衰退させる3つの間違い

・経営者が本当に考えないといけないのは、
  「どうやって顧客の期待をいい意味で裏切るか?」
  「どうやって競争を無力化するか?」
  「どうやって自社が唯一無二の存在となるか?」

①顧客のニーズや要望に応えるな
 ・すでに顧客が気づいているニーズは、おそらくほかの誰かでも満たすことができる
 ・顧客がすでに欲しいと思っているものを提供するのではなく、顧客もまだ気づいていないニーズや困りごとに気づかせ、そこを解決するキラーサービスを提供する
 ・顧客の要望通りに対応することは、作業の下請けになりがち
 ・下請けが儲からない理由は、下請けには企画・提案の余地が少ないから
 ・顧客の要望を聞くと「はじめての試み」が多くなってしまう
 ・「特注のようで標準」を提供する

 ⇒ 「下請け」では単価が低い
   主体的な特注品(=自社にとっては標準品)をつくる

②競合を意識しすぎるな
 ・顧客から見て「他社に競り勝っている」と思われたら駄目
   → 本質的な差別化はできていない
 ・ブルーオーシャンは敵だけでなく顧客すらいない可能性がある
 ・ニーズが多様化・細分化した今の時代においては市場が総ニッチ化している
   → 「ニッチ市場を狙え」は意味をなさない
 ・敵のいない市場を探し求めるのではなく、市場での戦い方を変える
 ・トップシェアを狙わない
   → 広く誰にでも受け入れられるような、ありきたりな商品をつくってしまう
   → 売上を取りに行くと、利益が低くなる

③自社の弱みを克服するな
 ・自社のUPPでも何でもない要素で他社と比較しても意味がない
 ・会社を全方位的によくしていったところで、顧客に刺さる突出した強みが生まれるはずがない
 ・顧客が本当にお金を払いたいものは、「無難で安いもの」ではないはず
   → もっと自分にとって価値があり、かつ他にはないもの、自分の想像を超えるもの、自分たちの生活やビジネスを変えてくれるもの、そういった「未知の価値」を与えてくれるものにお金を払いたい
 ・経営者が目指すべきは「低価格競争力」ではなく「高価格競走力」=高い価格をつける力を持つこと

6章 相手の常識を崩し高単価を実現する”非常識セールス”の実践

・「相手のニーズなんて把握する必要ない」
 「そもそも相手は自分のニーズなんて分かっていない」
 「相手自身も気づいていないニーズを示して相手を導く」

・セールスストーリーを作り込むことが重要
  → セールスストーリー=「なぜそれを語るか」

・未来の臨場感を上げるのではなく、「相手の現状の臨場感を下げる」アプローチ
  → 「自分のいまの状況は問題ない。大丈夫だ」という相手の考えが間違いであることに気づかせる

・主語を「あなた、御社」ではなく、「世の中・社会・業界」という抽象度に引き上げることで、話に客観性が生まれ、相手に気づきを与えることができる

・セールスストーリーを考えるのは、営業の仕事でも何でもなく、経営の仕事である

・理念ではなく、「品念」を伝える

・「品念」=会社の理念や経営者の信念が、商品やサービスのレベルにまで落とし込まれたもの

・「品念」=自社の商品・サービスの存在意義
 「なぜこの商品・サービスが世の中に必要なのか」
 「この商品・サービスが世界をどのように変え、お客さまをどう幸せにするのか」
 「なぜ他者の商品・サービスでは駄目なのか」