「すべてはビジョンから始まる ~これからの時代のブランディング」レポート

Chatwork主催のオンラインセミナー「すべてはビジョンから始まる ~これからの時代のブランディング」に参加しました。
講師は株式会社中川政七商店の代表取締役会長である中川政七さん。

中川政七商店さんが好きで、昔からよく中川淳さんが紹介されている雑誌や中川さんの著書も拝読してきました。

最近、伝統工芸や農産物のブランディングに関わる機会が増えているので、講演テーマがドンピシャ。
何かヒントになるものが得られないかと参加しましたの、例によって復習を兼ねてレポートを公開します。

地域商社のあり方とブランディングを考える

セミナーを拝聴して注目したのは次の2点です。

①地域商社としてのときがわ社中のあり方
②ブランディングについて

地域商社としてのときがわ社中のあり方

私は仲間と共に2021年3月から地域商社・一般社団法人ときがわ社中を運営しています。

「すべての工芸メーカーを買い支えるのは難しい。ならば販路を開拓して出口をつくる」という中川政七商店さんのスタンスは、これからのときがわ社中の目指す方向を考えるいいヒントになるのではないかと考えました。

ときがわ社中はあくまで商社ですから、自社商品を持っているわけではありません。
ただ、自社商品を持たないと決めているわけでもありません。
できることならば、地域の事業者と連携して自社のオリジナル商品の開発も手がけてみるのもおもしろいのではないかと考えています。

それはただ単に自社利益のために商品を持ちたいからという理由ではなくて、そうすることが地域の事業者の新たな販路にもなるし、地域産品の認知獲得につながるということが判断の大きなポイントだと思います。

メーカーと市場に向き合う姿勢が非常に参考になりました!

ブランディングについて

「ブランドイメージはお客様の頭の中にできる」という中で、ブランディングとはコンテンツ×コミュニケーション というお話が印象に残りました。

商品の質はもちろん大事。
だけど、その伝え方も重要ということです。

お客さんにどう見えるか、そのときにお客さんがどう考えるかを想像しながら、きちんと会社や商品のことを伝える、そして伝わるようにしていかないといけませんね。

ただ一方では、ビジョンの作り方のお話にもあったように「お客さんに媚びない」ことも大事だと思います。

自社が大事にしている価値観やルーツをしっかりと軸にして、それに共感してくれるお客さんを選ぶこと。
やはり最終的には「お客さんづくり」に集約されるのかもしれません。

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以下はセミナーの内容をまとメモしたものです。
ご参考までに。

まとメモ

中川政七商店の事業

●中川政七商店の歩み
・創業1716年 麻織物の仲卸として
 → それから300年以上の歴史があるが、当初は卸だけだった
・2001年に茶道具で8億円の黒字、麻雑貨で4億円の赤字
・2002年に入社して実施したこと
 ①徹底した業務改善
  → 当たり前のことを当たり前にできるように
 ②「商品に下駄を履かせる」
  → ソニー好きはいろいろ比較しても結局ソニーを選ぶ
  → 商品が下駄を履いているのでは?
  → どうすれば下駄を履かせられるのか?
  → ブランディング

●卸から直営店へのシフト
・百貨店に卸していた
 → 店頭では競合の商品とともに並べられている
 → 「ブランド」として認知されていない。たまたま
・直接お客さんに接しないといけない
・最初は儲からなくても、中長期的に見れば必要
・最初は手作業でバーコード貼り、店のスタッフもアルバイト
 → 利益が出るようになって徐々にシステム化した
・メーカーはモノは持っているが、売り方を知らない
 → 小売りのノウハウが必要
・年商4億円 → 64億円の企業に

●成功の秘訣はビジョン
・ビジョンがはっきりしていたから
・「日本の工芸を元気にする!」(2007年~)
・「元気にする」=経済的自立+ものづくりの誇りを取り戻すこと
・ものづくりの誇り=価格決定権を取り戻すこと
・そのために実施したこと
 ①流通の出口の拡大
 ②経営再生コンサルティング

●なぜ経営再生コンサルティングなのか
・メーカーにとって一番嬉しいのは買ってもらえること
・中川政七商店はファブレス企業
・中川政七商店だけで買い支えるには限界がある
・伝統的工芸品の産地出荷額
 1980年代 約5500億円 → 現在900億円
・産地は約300
・年商60億円の企業だけでは買い支えられない
 → 自立できる企業にするための経営再生コンサルティング
   波佐見焼での成功
・10年で20社の「産地の一番星」をつくる
・年商1億円以下の会社の再生屋というポジションで累計55社のコンサルティング

●人材育成事業
・コンサルティングの相談は受けきれないほど多い
 → 人材育成事業「経営とブランディング講座」
・コンサルティング=経営の家庭教師
・経営者はやらざるをえない。やらないとつぶれる
 → ドキュメントを出すというより、一緒にやって結果を出すことが重要
・自治体からの引き合いが増えている
・工芸品事業者×デザイナー、クリエイター
 → 両者が組んで最終プレゼンを行う
 → 両者の間に共通言語をつくることで成功率が高まる

ビジョンとブランディング

●すべてはビジョンから始まる
・利益追求でない企業のあり方を示す
・ビジョンとは将来のあるべき姿を描いたもの
・CSRからCSVへ
 CSR=自己実現×利益追求+社会貢献
  → 社会貢献は企業の事業とは別に行うもの
 CSV=自己実現×利益追求×社会貢献
  → 自己実現と利益追求と社会貢献の間にずれがまったくない
・CSVの真ん中にあるのがビジョン
・社員のモチベーションが全く違う
  → 稼いだお金で社会貢献(CSR)。じゃあ自分がやっているのはなんなんだ
・時代の変遷
・言葉でいいことをいっていても、真剣に取り組まないとハリボテのビジョンとなり、離反を招く
・会社がやっていることとビジョンが一致しているか
 → 一致させることが重要
 → Will、Can、Mustの重なりと同じ

●ビジョンをつくる時の2つのポイント
①合議で決めない
 トップの熱い想いでしか成り立たない
②お客さんに媚びない

●ビジョンを展開するための3つのポイント
・ビジョンはつくっただけでは意味がない
①社内浸透=インターブランディング
  ビジョンの意味を語り続ける+自分でやってみせる
  社長だけでなく、社員がやっていることがすべてきちんとビジョンにつながっていることを示す
②事業との整合性(数字とリンクさせる)
  数字に置き換えて、定量的な表現でビジョンへのコミットを示す
  300産地の産地出荷額900億円を3000億円に伸ばす=元気になったと言える
  小売額で7000億円と想定し、その1割を担う、など
③ユニークなビジネスモデルへの発展
  コンサルティングフィーだけだと成り立たない
  自社商品のOEM先の発掘や展示会などの販売手数料も組み合わせたビジネスモデル
  ビジョンを達成するために必要なことを考える視点

●ブランドとは
・差別化され、かつ一定の方向性を持ったイメージから、商品・サービスあるいは会社にポジティブな影響を与えるもの
・ブランドイメージはお客様の頭の中にできる
 → 100人いればそれぞれ抱くブランドイメージは違う
 → それをつくる作業がブランディング
・どうやってお客様の頭の中にブランドイメージをつくるか
 → 商品だけでなく、ブランドの構成要素すべてが関わる

●ブランディングとは
・伝えるべき情報を整理して、正しく伝えること
・伝えるべき情報=コンテンツ
・正しく伝える=コミュニケーション
・ブランディング=コンテンツ×コミュニケーション
・職人は多くを語らない。モノが語ってくれると思いがち
 → 商品だけでは伝えられない

●何に、どんな風にブランドを感じるか
・時代と共にトレンドが少しずつ変わる
・ブランド価値の時代変遷
 プロダクト → ライフスタイル → ライフスタンス
 安心 → 憧れ → 共感 → 信頼
・優先されるものが違う
・製品の機能には大きな違いはなくなっている
・個人とブランドが信頼し合える関係をつくる
 → ブランドコミュニケーション